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第24話
「死ぬ…」
ぽつりと呟く…
「死んだら…母さんのころへ…行ける?」
本当の母親に会える?
『行けるはず――』
「お母さん…」
『楽になれるから――』
「楽に…」
『もう…殴られることも、いじめられることも…ない――』
そこへいけば…
由里は虚ろな瞳をひらく…
薄暗い中…
由里の瞳に凶器となるそれが映る…
無造作に床に転がっている…
小枝切り用の刃幅が大きく先が尖ったハサミ…
重く頑丈な鋏は…子どもの指くらいなら切り落とせそうな代物だ…
『それを取って――』
「……」
由里は…その凶器に、寝転んだまま、右手を伸ばす…
ずしっと重みのあるその凶器…掴み損ねて、鈍い音をたてて落ちてしまう。
『しっかり持って――』
頭で響く無機質な声に…逆らうこともできず、言いなりになる由里…
重いはさみを握りしめる…
『――どうしたい?』
「……死にたい」
死ねば…
義祖母さんに叩かれなくてすむ…
義母さんに怒鳴られずにすむ…
つらい仕事をさせられなくてすむ…
嘘をつかなくてすむ…
何も恐いことない…
『早く――』
早く…
寝転んだまま…目の前にある左手首を見つめる。
苦しいから、早く…
『手首を切って自殺――』
小説で読んだことがある…
ここを切れば…
死ねる…
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