26 / 129
第26話
「…っ」
安らぎに飲み込まれそうになる気持ちを否定して…瞳を無理矢理あけて、再びハサミを握り、左手首を切りつける。
「ッ…痛、い…から」
ちゃんと…生きてる。
異常と思える行動も…由里にとっては意味があった…
虚ろになるたびに…左手首を切りつけて、意識をはっきりさせる由里…
それを何度か繰り返す。
しかし…
出血多量の影響か、指先が痙攣し…ハサミを掴めなくなってくる。
痛いのか…眠いのか…
もはや感覚がつかめないほど意識が混濁してきていた。
確実に…死の匂いが近づいている。
ガタン…
物音とともに眩しい光が由里の視界を焦がす。
「……」
「……、」
誰かの話し声が聞こえる。
でも…遠くで聞いているような感覚…
途切れ途切れで分からない。
気にするな…眠った方がいい。
そう命令されているようで…
もう、あらがうすべもなく…眠りに落ちてしまう由里。
ともだちにシェアしよう!