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第26話

「…っ」 安らぎに飲み込まれそうになる気持ちを否定して…瞳を無理矢理あけて、再びハサミを握り、左手首を切りつける。 「ッ…痛、い…から」 ちゃんと…生きてる。 異常と思える行動も…由里にとっては意味があった… 虚ろになるたびに…左手首を切りつけて、意識をはっきりさせる由里… それを何度か繰り返す。 しかし… 出血多量の影響か、指先が痙攣し…ハサミを掴めなくなってくる。 痛いのか…眠いのか… もはや感覚がつかめないほど意識が混濁してきていた。 確実に…死の匂いが近づいている。 ガタン… 物音とともに眩しい光が由里の視界を焦がす。 「……」 「……、」 誰かの話し声が聞こえる。 でも…遠くで聞いているような感覚… 途切れ途切れで分からない。 気にするな…眠った方がいい。 そう命令されているようで… もう、あらがうすべもなく…眠りに落ちてしまう由里。

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