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第35話

「……」 「北上君は、あの部屋にいますよ…あっ!いけない、少々お待ちください…」 手でさして教える職員だが、他の部屋の子どもが暴れているのに気付き止めにいってしまった。 父は由里がいる部屋へ急ぐ… 窓から中をみると… 「いない…?いや…ヨシ、ヤス?ヨシヤス!」 窓側の端にうずくまっているのは…由里! 「っ!!」 その声にピクッと反応して直ぐに振り返る由里… 「ヨシ…ヤス、お前…」 ほんの二週間前に会ったばかりの由里… しかし、由里は痩せて弱々しい姿になっていた… 「お…、お父さんっ!!お父さんっ!助けてっ!お父さんッ」 震える声を無理に出して助けを求める由里… 「ヨシヤスっ」 入ろうと思うがカギがかかっていて入れない… 「アァァ~」 由里が騒いだ為、部屋にいた男子が叫びながら走り回る。 由里はビクッとするが…父のいる窓のそばから離れない… 父も驚くが… 「出して、お父さんっ帰りたい、帰りたいっここから出して!!」 恐怖心からボロボロと涙を流して…懇願する由里。 「っヨシヤス、わかった、わかったから…待ってろ!」 そんな由里の姿がいたたまれなくて… カギを借りる為急いで職員を探す父… 「待ってください、祐司くんが落ち着かないと開けれません…危険ですから…」 叫びまわっている男子のことだ。 職員はそう言って鍵をあけてはくれない。 「そんな、一緒にいるヨシヤスは危険じゃないのか?早く出してやってくれ!ヨシヤスを」 何度も頼む父… 怯える息子を助けたい一心で… それに負け職員は用心しながら、少しだけ入口を開けてくれる。 父は由里の腕を引きながら…部屋の外へ連れだし由里を抱きしめる。 「ヨシヤス、ごめんな、こんな所へ一人だけにして…恐かっただろう…」 「っと…さん、ふっぅ…わぁぁあんっ」 父の腕に抱かれ安心感も手伝い、溜め込んでいた気持ちが溢れ出す… 大声で泣き出す由里… 「ヨシヤス…」 父はヨシヤスが落ち着くまで抱きしめて…優しく慰める。 「すみません、俺はこの子の父親です、ヨシヤスを連れて帰りたいんですが…」 「外泊ということでしょうか、失礼ですが、身分証明になるものを見せていただかなくては…契約の責任者がお母様になっていますので…」

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