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第38話
由里を家に置きたくない義母は、そう言うが…
「違う、ヨシヤスはもう自傷はしないと言っている、だから拘束しなくても大丈夫だ」
車の中で約束したこと…
父は由里を見て言う。
由里も頷く…
「わかったわ…しばらくは家で様子を見ることにするわ、あなたは今度いつ帰って来れるの?」
さすがに典之に逆らえない義母…
苦々しく頷く…
「まだ分からない…だが近いうちに帰れるようにする」
「そう…」
俯き頷く義母。
「今日はすぐ向こうに戻るから、ヨシヤスのことを頼むぞ…」
仕事のため、傍にいてやれないもどかしさを持ちながら頼む父…
「…えぇ」
やや暗い表情の義母。
「ヨシヤス、約束を守っていい子にしているんだぞ、また帰ってくるから…」
由里の頭を優しく撫でて言う。
「はい…いってらっしゃい、お父さん」
父の言葉を信じて、寂しい気持ちを隠して頷く由里。
「あぁ、じゃまた」
手を振って行く父…
義母は父を送りに出ていった…。
家に帰って来れた…
けど、由里にとってここも安心できる場所ではない…
義母や義祖母の暴力が待っている。
でも、施設へ戻るのは嫌だから…義母の言うコトを聞いて…義母を怒らせないようにしていくしかない。
そう健気に思う由里…
しばらくして…義母が戻ってくる。
「……お義母さん、ごめんなさい」
無言の義母に、恐る恐る謝る由里。
勝手に戻ってきたことを…
「っ!」
俯いていた義母は由里の声を聞くと、キッと睨みつけ…
バシッ!
いきなり平手打ちを由里にくらわす。
鬼の形相だ…
手加減なしの仕打ちに、その場に倒れる由里…
「ッ!悔しいっ!あんたさえ居なければッ!典之さんだって、私のために…っ」
ヒステリーを起こしたように怒鳴りながら由里を叩きつける。
「っ…痛ッ、ごめ…なさい、お、かぁさん…」
暴力を受けながらも必死で謝る。
「あんたなんかに母と呼ばれたくないわっ憎らしいッ何で戻ってきた!?なんで…生きてッ、あの時、助けるんじゃなかった…そうすれば死んでたのにッ」
怒鳴りながら由里の首に手をかける義母…
睨みながら手に力を加え、由里の細い首をじわじわと締め付けていく義母。
「っく、るし…やめ、て…か、さん」
締め付けられ、声にならない声で言うが…
「あんたなんかっ死ねばいいッ!」
「…ったく、ない…、死に、たくない…」
義母の手首を掴んで…擦れた声を無理にだす。
不意に第三者の声が…
「何を騒いでるんだい」
家の二階からおりてきた義祖母だ…
「っ…」
それと同時に締め付ける手も離され…
「ッけほっこほっごほっ!」
酸素をとりいれようとムセてしまう由里。
「なんだい、捨ててきたんじゃなかったのかい」
由里のことをさして言う。
「母さん、違うの、典之さんが連れて帰ってしまって…きっと帰りたいとか言ったんだわ…」
「フン、じゃぁ…二度と帰りたいと言わせないようにしてやろうじゃないか…」
義祖母はそう鼻をならし近づく…
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