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第54話

「あはははっばーかっ」 「クッセー、寄るな寄るなっ」 「汚い奴ほっといて向こう行こうぜ!」 三人は由里を笑い者にした後、さっさと帰っていってしまった。 「っ…」 なんだか悔しくて涙が滲んでくる。 しかし、どうすることもできなくて、悔しい気持ちを押し殺して… 由里は溝から自力で上がって家に帰りつく… 家にはいつも誰もいない… 父が仕事から帰ってくるのは早くても夜8時… 遅いときは11時を過ぎることも… 父が帰って来るまで心細いが、以前のように暴力をふるわれたりすることはないので肉体的苦痛はなくなった… 今日は帰って汚れてしまった足と靴を自分で洗う。 そして部屋で宿題をして、そのあと本を読んで過ごすのが日課… 夜8時過ぎ… 「ただいま…」 その声を聞いて急いで由里は玄関に向かう。

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