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第61話
「お前は…新しいお母さん欲しいか?」
迷いながらもそっと聞く父。
「え…」
「いつもひとりで待たせてしまって、寂しい思いをさせてしまっているだろ…お母さんがいれば、こんな毎日、弁当じゃなく美味しいご飯を作ってくれるかもしれない…ヨシヤスに酷いことをしない優しいお母さんなら…お前は欲しいか?」
自分が仕事詰めのせいで、まだ小学生の由里に寂しい思いをさせてしまっている。
やはり…その思いが気がかりだった。
しかし義母から虐待経験のある由里がどう思っているのか…
由里の望みを聞きたくて…
「いらない…」
由里は、少し視線を下げてポツリと答える。
「ヨシヤス…」
「僕、お父さんがいれば全然寂しくないよ…お父さんと暮らせてる今がとても幸せだよ!それに…僕のお母さんは、天国にいるから…」
そして父の顔を見て笑顔で伝える。
「ヨシヤス…」
「だから、代わりはいらない…」
「ヨシヤス…分かった、変なことを聞いてごめんな」
「ううん」
父親を見つめながら首を振り微笑む。
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