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第63話

「これがお母さんだよ」 写真に写る笑顔の女性を見せる父。 「……」 肩くらいの髪…綺麗で優しそうな女の人… 「お母さんとは施設で会ったんだ…」 「施設?」 「お互い親がいなくて…養護施設に預けられていた…」 「とても優しい人だったよ、でもとても病弱で…何度も入退院を繰り返していた」 想い出すように、母のことを父は語る。 「母さんと結婚しても…入院費やいろいろかかって、なかなか贅沢な暮らしはさせてあげれなかったけれど…」 「お前がお腹にできた時、とても喜んでいたんだ。今までで一番嬉しい贈り物だって…」 写真を見つめ、優しく微笑む父… 「…僕が、生まれたせいで、母さんは死んだの?」 それを見て… 自分が生まれたから…父さんの大切なひとを奪ってしまったという気持ちが思い起こされて… 俯いて、ぽつりと聞いてしまう由里。 「…違うよ、お母さんは元々重い病気だったから…ヨシヤスのせいじゃない」 父ははっきりと答え、由里の頭を撫でる。 「……」 そっと顔をあげる由里… 「母さんが書いたんだ…」 父は優しく微笑んだまま、母子手帳を開いてみせる。

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