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第89話
「う、うん」
否定することなんか出来なくて…暗示にかかったように頷く…
「ありがとう、まだおしり痛む?」
由里の背にそっと手を添え心配してくれる。
「……うん」
素直に頷く…
「そうしたらね、俺の首につかまって、連れていってあげる」
そういうとバスローブ姿の由里を軽く抱き抱える青年…
「わ…」
ふわっと抱き抱えられて…驚く。
父親以外にこんなに優しくしてもらったことがない由里。
戸惑ってしまう。
「大丈夫、おしりの手当てもしようね、たぶん怪我しちゃってるから…」
安心させるように囁いて…
「…うん、……お兄さんに前、会ったことある…」
そういえばこのカッコイイ人を見た覚えがあった。
たしか…バス停で待っていた時、馴れ馴れしく話しかけてきて、自分をカメラで写した、
「そうだね、あの時は勝手に写真撮っちゃってゴメンね…」
察したように謝ってくる青年。
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