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寮に帰ると声が聞こえてきた。
(上條はまだ帰ってこないよな。
今のうちに急いでシャワー済ませちゃおう。)
そっと鍵を回し、部屋に入る。
シャー。
風呂場から水音。
そりゃね、好きな子と同室。
風呂上がりにドキドキムラムラしてたのは否定出来ない。
前は気持ちがバレたくない。
そう思ってた俺は一切、顔に出してなかったと思う。
………………昨日は俺の声が聞こえたって言ってたし、多分、色々バレてる。
(急げ。急げ!
風呂上がりとか見たら……襲われるかも……
おい!自意識過剰!!
…………だって、アイツ、手が早いんだもん。)
渋谷は心の声も騒がしいな。
…………それは渋谷が可愛いせい。
自意識過剰じゃないよ。
渋谷の事、邪な目で見ちゃってる。
キスした時の照れた顔……可愛かった……
今日はキスだけじゃ済まないかも。
だって可愛くて我慢出来ない…………
(きょ、今日も一緒に寝るのかな……
昨夜は『抱きしめて眠るだけ。』とか言って、数えきれない位、キスされた……
上條、やらしかった。
………………でも。キス、嫌じゃなかった。
上條とのキスはなんか甘くてフワフワして……
また、するのかな……
されたら、どうしよう……
あ?俺、期待してるみたい?そんな事は!)
ガチャ。
ドアが開く。
風呂から戻ってきた渋谷と目が合う。
「ただいま。渋谷。」
(え!?いつ、帰ってきたの!?
今の聞かれちゃってた!?)
カァッ!
渋谷が赤くなる。
「か、上條……今……」
「大丈夫。聞いてないよ。」
ニッコリ笑ってみせる。
(う、嘘だろ……さっきの心の声、聞かれちゃったんだとしたら……
しかも、俺、『今』しか言ってないのに……
『聞いてないよ。』って!)
「聞いてんじゃねーか!」
騒ぐ渋谷を引き寄せて、キスをした。
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