5 / 8

第5話

「あ……っ、は…やめろ、アシー…ル……っ」  貪るような接吻の合間に、叔父が途切れ途切れに抵抗を見せる。いつも犯されそうな眼差しで見てくるくせに、この叔父には変なこだわりがあるらしく、儀式の後以外は自分に触れて来ないのだ。 「いい加減、偽善者ぶるのをやめたらどうですか」  椅子の上に座っている叔父の膝の上に乗りながら、アシールは執拗に叔父の唇を求めた。 「予定のない時に恋人のように抱いてくれると言ったでしょう」  そっと頰に触れながら叔父が自分を見上げてきた。もう片方の手は腰に回されている。 「なあ、アシール」  榛色の瞳は相変わらず優しい。 「俺はおまえがかわいいよ。それに家族以上に愛してる。だから抱きたいとは思っても、おまえがいやなことはこれ以上したくない。だから、おまえの本当の気持ちが聞きたい」  彼は真面目な顔でそう言った。触れられた頰が熱くなる。そういうところが、好きなのだった。 「アントワーヌ……あんなことを言ったけれど、僕は、本当はあなたに恋人として抱かれたい……」  そう、普段みたいにほとんど錯乱して記憶も残らないような交わりではなく、ひとつひとつ慈しみ合って愛し合いたい。  ぎゅっと抱きしめられた。 「恋人になりたい人が俺しかいないような環境で、ごめんな」 「アントワーヌ、……僕はあなたがいいんです」  信じていないような表情で、彼は小さく笑った。きっと彼が信じる日なんて来ないんだろう。世界のどこにいても、どんな目に遭っても、彼さえいればいいなんて。そんな風に自分が思っていることは。 「あなたはきっと、これからも僕にアルプスの山小屋を勧めますね」  ため息と一緒に囁くと、「いつか連れていってやる」と返ってきた。

ともだちにシェアしよう!