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逃避 3

「菅井さん?」 「ん?ぁ、ああ」 「どうしました?」 菅井さんはにこっと笑った。 「和と出会った頃のこと思い出してた。」 僕も思い返す。 「菅井さんにはとても感謝してます。あの時、菅井さんがいなかったらって思うと…」 向かい合ったまま、菅井さんは僕を抱きしめた。 「最初はなかなか心開いてくれなくて、ってかむしろ、拒絶されてて…。」 「えと、それは、ごめんなさい。」 僕は思わず苦笑いをする。 「でも、今はこうやって俺といてくれて、本当に嬉しい。」 1年前、高校1年の時、僕は身売りをしていた。 客の中に厄介な人がいて、気に入らないことがあると、乱雑に暴力を振るわれたりしていた。けれど脅されてたから関係を拒むことが出来なかった。 そんな時、助けてくれたのが菅井さんで。 精神的に不安定になってたから、なかなか人を信じれずに、全員が敵に見えた。菅井さんもそのうちの1人だった。 それでも看病してくれたり、諦めずに話しかけてくれたりして、僕は徐々に心を開くようになったのだ。 「和」 菅井さんは真っ直ぐ僕を見据える。 「俺は和のことが好きだ。付き合って欲しい。」 僕は大きく目を見開いた。 菅井さんの真剣さに圧倒されて、ふと目を逸らしてしまう。 「あの、えっと、僕は…」 「和。」 菅井さんは離れようとする僕の肩を掴んで離さない。 「和、お願い、答えて?」 僕はこの時、少し弱気な菅井さんを初めてみた気がした。だから僕は相変わらず目を逸らしたまま答えてしまう。 「僕は…僕は、汚いから…。」 「和は汚くなんかない、そうやって自分を否定するなっ!」 僕を離すまいと抱きしめる菅井さん。 「やっ…!やだ!汚いっ、お、俺は、僕はっ!離してっ」 自分でも訳がわからなくなってきた。 僕を批判する声が聞こえてくるようで…。 「和、落ち着けっ、」 焦る菅井さんの声が遠くに聞こえ、そこで僕の意識は途切れた。

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