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逃避 5 R18

繋がったまま、僕は菅井さんの背中に手をまわす。応えるように菅井さんも包み込んでくれた。 「菅井さん…、僕は、」 「うん?」 「僕は汚いです。」 「………。」 「僕はいつも不安に駆られます、それで耐えきれなくなって、自分で制御効かないほど弱い人間です。」 頬を一筋の涙が伝う。 「そんな弱い僕でも、隣にいてくれますか?」 消えるような声でも菅井さんはちゃんと聞いてくれた。そして、零れ落ちた涙を優しい手つきで拭ってくれる。 「ああ。」 「守ってくれますか?」 「勿論だ。」 それを聞いた僕はぎゅっと菅井さんにしがみついた。 「救い出してくれますか…?」 「和。」 僕の言葉を遮るように僕を呼ぶ声。 「はい。」 「救い出してやる、どんなとこからも、、ずっとそばにいる、 ……だから、俺と付き合って。」 今度こそ真剣な目。これは逃げかもしれない、卑怯なのかもしれない。でも、僕はこの人を信じて、この人に委ねようと思った。 「はいっ…。」 その日初めて、僕の方からキスをしたのだった。 …… ……… 「ん、」 うっすら目を開けると、窓から柔らかい光が差していた。横には綺麗な寝顔があって、お互い服をまとってない姿は昨日の出来事を思い出させる。 この人と僕は恋人同士になったのか…。 僕を助けてくれた時以来、体の弱い僕を心配して週に1度、体調を診てもらう為に菅井さんの家に通うことを義務付けられていて。部屋が隣だから僕はそれを苦としていなかった。母親を小さい頃に亡くし、父親とは仕事の都合上離れてくらす僕にとって菅井さんは短かに頼れる存在だった。 診察の都度、僕の体調が良い時は身体を交えた事もあった。逆に恋人でなかったら、何だったのだろうか。 これで正解だった。…そう思う。間違えていない。そう確認するかの様にもう一度僕は自分から唇を合わせた。 「、かず…?」 眠そうに目をこする菅井さん。僕のキスには気づいていなさそうだ。 「菅井さん、おはようございます。」 「ん、おはよ…。」 菅井さんは寝ぼけ眼に寝転んだまま僕を抱き寄せた。 「菅井さん、今日お仕事は?」 「今日は休み、和も学校休みだろ?」 「はい、休みです。………あ」

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