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予兆 2

「新婚生活みたいだな。」 後ろからふわりと抱きしめたまま、菅井さんが言った。顔が赤くなってるのが自分でもわかる。 「あれ、和、照れてる?」 面白そうに頬をつねってくる。うう…、なんだか心がくすぐったい。 「…そこのお皿とってください。」 「はいはい。」 くすりと笑い、お皿を取ってくれる。 この人にはなんだか一生勝てない気がした。 食事の用意ができ、小さな机に向かい合わせに座る。 が、きょとんとしたまま、菅井さんは食べようとしない。 「えっと、、どうしました?」 聞こえてるのかと疑問に思いつつ、聞いてみると、 「俺の分だけか?」 「はい、今食欲ないので。気使わなくていいですよ?」 僕がそういうと菅井さんは、呆れた、と言う顔をする。 「食欲なくてもちゃんと食べなきゃ駄目だって言ってるだろ?また倒れたらどうするんだ?」 今までの週に1度の診察で、毎回のようにその言葉は聞いていた。それでも少食の僕はあまりご飯を食べられなくて栄養が足りずに倒れた事もあり、健診では必ず点滴をされていた。 「今までは医者として言ってたけど、今日からは恋人として言わせてもらうからな。」 真剣な目で言われたが、昨日の行為で体力を消耗した僕には、胃が食事を受け付けない気がした。 「ごめんなさい、今はほんとに食欲なくてっ……………!」 言い終える前に腕を引っ張られて、菅井さんが座ってたソファーに押し付けるように座らされた。ソファーと菅井さんに挟まれ身動きがとれない。 「もう和はお前だけのものじゃない、俺のものでもある。俺のためにも体、大事にしてくれ。」 わかったか?と聞かれ、素直にこくんと頷いた。それを見て菅井さんは嬉しそうに笑う。そして、両手を頬に添えられて。 察した僕はゆっくり目を閉じる。 ガチャッ! 「こっんにちわっーーーーーーー!!こうくーーーん………………。」 「っ…………。」 「……………。」 「失礼…しましたぁ……。」 「っ……!」 突然入ってきた男は何も見なかったかのように出て行き、菅井さんも何もなかったかのように、そのままキスをしてきた。 「んぅ……っ」 息が苦しくなり菅井さんの胸板を叩く。 「あー…、このまま和たべたい…。」 「なっ……!じゃなくて!菅井さん!」 「ん?」 「さっきの人っ、」 僕が必死にそう言うと菅井さんは、ああ、とめんどくさそうな顔をする。 「鬱陶しいやつだけど、ちょっとだけ部屋に入れてもいいか?」 菅井さんの態度からみて、ややこしい人なのだろうか。玄関に行く姿を見送りながら少しだけ身構えるのだった。
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