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変化 3 浩side
浩side
点滴をし落ち着いてきたのか和は眠たそうにしている。
「心配するな、今日はもう寝な?」
そう言い、もうほとんど閉じている瞼にそっとキスをした。そうするとすぐに眠ってしまった和は時折苦しそうに眉間に皺を寄せている。寝ている時だけでもゆっくり休んで欲しい。俺は心からそう思った。
ほんのり汗ばんだ前髪を横に流してやっていると、静かな部屋に電子音が響いた。
ピリリッー
デスクトップに表示されている名前を見て、寝室を出てから通話ボタンを押す。
『やぁ、お取り込み中だったかな?和くんと。』
いつもと変わらない調子の声。
「なにか用か、陸。」
『俺から電話がかかってくると浩は仕事だとしか思わないんだ?』
「それ以外に話すことなんてないだろ。」
『あははっ、つれないなぁ、浩くん?』
俺を挑発するように楽しそうに笑うこういう時は大抵機嫌がいい。
「……何かいい事でもあったのか?」
『わかる?流石だね、浩くんは。いやぁ、極秘情報を入手したんだよね、こういうのってさ、わくわくするよね、知りたい?』
こいつは…。
やはり、俺をイラつかせる天才だ。
「はぁ、お前な、また変なところに首突っ込んでんじゃないだろうな。」
『そんな人聞きの悪い言い方しないでよ、浩のためを思って言ってんのにさ。』
「ん?俺に関係してんのか?」
『そう、まさに灯台下暗し。浩は目の前の事に集中することはいい事だけどさ、集中しすぎて、たくさん見落としてることあるよ?』
「どういう…『さあね!それは自分で見つけないとね~、なんせ、極秘情報だからさ?それで、仕事の事なんだけど。』
俺の言葉を遮るかのように陸はそう言う。何のことを言っているのかは全く分からなかったが、近くの事といえば和のことしか思い当たらない。
何か見落としてること…。
『浩くーん?おーい。』
「あ?ああ、それでなんだ仕事の話って?」
『今回のターゲット滝正史のことなんだけど。』
「ああ、あの癌の爺さんか。」
癌に侵されている爺さんは、すでに入院させられていて、様子を診に行ったがあと半年も生きられないことが目に見えた。それでも殺して欲しいと依頼者に思われる爺さんは、というよりお金持ちは悲しいもんだ。
『そう、滝正史の依頼者が明日までには殺して欲しいって言ってる。今から来れる?明日の朝早くでもいいんだけど。』
そう言われて、俺はリビングから寝室を覗く。和は相変わらず眠ったままで。
「今日中にいく。とりあえず和の点滴が終わるまで家にいていいか?」
『構わないよ、ゆっくりきて。』
「ああ、悪いな。」
『ターゲットからしたら延命だからね、喜んでるんじゃない?あ、そうだ、灯台下暗しだけど、考え過ぎも良くないからね、じゃあね~!』
プツッ
一方的に切りやがった。灯台下暗しか…。俺はまた寝室に戻り苦しそうな寝顔を暫く見つめた。
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