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焦り 2 陸斗side

俺は成からの情報を参考に男娼のふりをして内田がよく出入りしていたというBARにきていた。更に詳しい内田の情報を入手するために。しかしそんな必要はなかった。それはほんとうに偶然で。BARの入口で男たちが久しぶりに内田が来ていると話しているのををたまたま聞いたのだ。中に入ると歳や背格好、それらしき人物が奥で1人、酒を呑んでいた。これという確信はなかったがカマをかけてみると、内田は分かりやすく息をつまらせた。 「あははっ!なんで名前知ってるのかって顔してる。」 「……何が、目的だ、お前は一体…。」 俺の企みを探ろうと警戒する目に、関係者と悟られるような事はしないように心掛ける。しかし、もう一押しはしておくべきだ。 「ここら辺じゃ、有名な話だけど、知らない?」 固唾をのむ音が聞こえ、俺はそのまま言葉を続ける。 「少し前まですごく評判のいい男娼がいたのに、最近姿をみせなくなって、音沙汰もなくなった。でもある日、街で偶然、元客がその男娼に出会って、姿をみせない理由を問いただしたら、恋人ができたから売りは辞めたと言ったらしい。その男娼の名前は佐伯和。そして、その子を溺愛していた客が1人いて、その客が恋人なんじゃないかってみんな噂してる。それって、お兄さんのことじゃない?」 そこまで言うと、内田は少し考えて、そして、口を開いた。 「ああ、それなら…。」 俺が和の恋人だ。 そう肯定しようとしたのだろうか。肯定すれば、その噂が事実にかわり、誰も自分のことを詮索するやつはいないだろうと。 「あれ?でも、おかしいよね。」 「何が…。」 「今、その恋人が、和が誘拐されたんじゃないかって、必死になって四六時中探しまわってるみたいなんだけど…、お兄さんが恋人なら、今ここでお酒なんて呑んでないよね、あの噂は間違いなのかな…?」 うーん、と考えるふりをして、横目でチラリと内田を見遣る。 さあ、ここでどう出る?これは心理戦だ。俺はこういう類にはめっぽう強い自信がある。こうして、あくまで噂好きの男娼として、少しのカマをかけるだけでいい。内田は焦って何かしらアクションを起こすはずだ。 これは和くんの身の危険もあるかもしれない。それを考えるとかなり際どい賭けだ。だから、 どうかボロを出してくれ。 切羽詰まった顔でBARを出て行く内田を見ながら、そう願った。

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