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策に嵌る 1 内田side
BARからの帰路は到底穏やかではなかった。直ぐに変わる赤信号にさえ苛々した。
思い通りにいかない。
昔からそうだ、
俺はっ…。
「……くそっ。」
まだ長い煙草を踏みにじった。
和を探し回っているやつがいる?菅井浩に違いない…。没収した携帯で、和のフリをして送りつけてやったのに、信じていなかったのか。
先程の男の言葉を思い出す。
あいつは…菅井は和が誘拐されたんじゃないかと疑っていると言っていた。冗談じゃない。俺から和を奪ったのは、菅井のほうだ。だから俺は取り返しに行っただけ。今だって、和はもうとっくに堕ちて、俺の手の中にいる。
その証拠をあいつに知らしめてやる。
俺は苛つきを跳ね除けるように、部屋の扉を勢いよく開けた。バンッと大きな音がして、起きていたらしい和は、分かりやすく怯える。その様子に俺は舌打ちをした。
堕ちてはいるものの俺をこうやって、怯えたように伺うように見る。本当に欲しいものはそんな目じゃない。けれど、今はまだいい。俺に支配され、従ってさえいれば…。
「あ、の…おかえりなさい…。」
震えた声でそういう声に少し気をよくしながら、俺は和に覆いかぶさる。そして小瓶を差し出した。
「これ飲んで、全部、残らず。」
その小瓶に見覚えがあるのだろう。
この媚薬は2、3滴でかなり強力な効果があり、意識麻痺、つまり惚れ薬的な要素もあり、そして違法薬物でもある。
客を選ばなかった和にとって、ややこしい客に使われていてもおかしくない。
「やっ…!」
ガクガクと震えて、暴れる。
暴れたと言っても、かなり落ちた体力ではなんの抵抗にもならなかった。そのまま押さえつけて、耳元で無機質な声で囁いてやる。
「飲め、でないと躾部屋だ。」
掴んでいる手首から温度がなくなるのがわかった。
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