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策に嵌る 3 開生side

自分の眼に映る男は、人間か。…いや、バケモノだ。開生はそう自問自答していた。 腹にたった1発の拳を食らっただけなのに、壁に自分の体が埋もれたのは、つい先程のこと。 「いってぇ…。」 殴られた腹よりも、壁を割った背中の方が痛くて静かに悶える。 パラ…と壁から欠片が落ちた。 「涼平さんやりすぎ…開生、大丈夫…?」 「悪い悪い、まさかあんなにクリーンヒットするとは思わなかったからなぁ!でも筋はいいぞ、開生!」 俺の背中をさすりながら心配する実さんとは真逆に、涼平さんは豪快に笑った。 実さんと涼平さんに護身術を教わる事になった俺に、実力を見る為、力試しに先に1発入れた方が勝ちという試合を涼平さんが提案していたのだ。サッカーで鍛えられた俊敏な動きで何度かの攻撃を避け、1発パンチを食らわそう、というところまでは行ったのだが…。 「攻撃する時にそっちに意識が向きすぎて、体がガラ空きだったぞ〜。」 「う……。」 楽しそうに拳の素振りをする仕草をみて、腹の痛さも復活する。 「驚かせてごめんな、武器を持ってる相手にも、素手で勝っちゃうくらい、馬鹿力なんだ。ねぇ、涼平さん?」 「さっきはまだ本気じゃねぇぞ〜?」 「馬鹿力ってレベルじゃないですよ!」 俺の悲痛な叫びも虚しく、2人は笑った。 あれから、なんとか痛みから立ち直り護身術を教わった。まだ完全に身にはついていないけど、コツは掴んだ気がする。ボスからの招集に、部屋まで3人で向かう最中、涼平さんの後ろ姿を見て先程の自分のやられ様を思い出した。 俺って、非力だな…。少し悔しくて唇をかみしめていると、 「開生?調子わるい?」 隣に歩いていた実さんが俺の顔を覗き込む。 「俺、キアロスクーロに本当に入ってよかったんでしょうか…。」 「どうして?」 「俺は涼平さんみたいに攻撃力もない。自分の身を守るのさえ精一杯で…逆に足手まといなんじゃないかって…。」 そう言って、自分で余計に悔しくなった。 「かーいせいっ!急に弱気になってどうした。足手まといにならないように、今頑張ってるんだろ?」 涼平さんはくるりと振り向き俺の頭に手を乗せる。 「そうです。けど…。」 「和くんを助けたいんだろ?」 その言葉はズキリと心臓にささった。 そうだ、俺は和を助けようと思っていたのに。今でも和は辛い思いをしているかもしれないのに。俺が、くよくよしてどうする。 「すみません、おれ…助けたいです、和を。それから、強くなりたいです!」 ぐっと大きな声を出す。そうすると涼平さんが俺の手を握った。 「そうだ!その気迫だ!」 「はい!」 「このボスの呼び出しが終わったら、猛特訓だ!」 「はい!」 俺と涼平さんのやり取りをみて、実さんはやれやれと軽く息を吐いた。
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