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打開 4 浩side

「和くんを優先で考えるのは、お前のただの自己満だよ。」 そう付け足した陸が、今度は俺の胸ぐらを掴んだ。 「前にも言ったけど、尾行しなかったのは、慎重に考えた結果。カマをかけた時も、和くんに何らかの被害は加わるかもしれないのは充分承知の上でやった。」 だったら…何故。 その言葉は声にはならなかった。 陸が俺には初めて向ける表情をしていたからだろうか。 「浩は、何の犠牲も出さずに、和くんが綺麗なままで帰ってくるとでも思ってるわけ?そう思ってるのならバカだよ。今回の件で、他にどれだけの犠牲が出たか、見えてないの?」 他に…? 「それは、どういう…。」 俺の言葉に陸は、はぁ、と溜息をつく。 「どうして今ここに成がいないと思う…?」 それは、この間俺も不思議に思ったこと。やはり関係していたのか? 「成はね、情報を得るために、自分の身体売ったんだよ。それで、ボスの逆鱗に触れて今は謹慎中。」 「……っ!!」 脳が鈍器で殴られたみたいな衝撃だった。 「成だって被害者だけど、ボスはもっと被害者だよね。自分の大切な恋人が知らぬ場で知らぬ男に抱かれてる訳だから。浩ならボスの気持ちわかるでしょ?それに、開生も。浩は開生がこの組織に入る事に反対してたけど、そもそもこんな事がなかったら、この世界に足を踏み入れることはなかった。2人共、自分の意思でやった事だし、それで和くんを責めてる訳でも、浩を責めてる訳でもない。」 パッと手を離され、俺はその場にへたり込んだ。 「ただ、その事を理解せずに、自分の思い通りに事を進めようとしてるのなら、それは大きな間違いだよ。みんな、それぞれに犠牲を払ってきた。和くんにも頑張ってもらわないといけないし、浩もそれに耐えるべきだ。」 「…すみません…俺……。」 振り絞って出した声は、情けない声だった。確かに陸の言う通り、俺は自分の事ばかり考えていたかもしれない。周りを巻き込んで、それでも尚自分本位に進めたくて、更に皆を困らせていたなんて。惨めな自分が情けなくて、頭を下げたまま、俺は続けた。 「陸、悪かった…。こんな時こそ冷静にならなければいけないのに、頭に血が上って、自制が効かなくなって、周りが全く見えてなかった。お前の言う通り、俺は自分の事しか考えてなかった。当の本人が、ちゃんとしなきゃ駄目だよな…。」 協力してもらっているのに、俺が雰囲気を悪くしてバカみたいだ。はっと乾笑いをして自分を罵る。暫くの沈黙の後、別の声が俺を罵った。 「ほんと、バカだよ。」 陸が俺の前へ来て、しゃがみ込む。 「分かればよろしい!物分かりのいい浩くんは嫌いじゃないよ。俺も手荒な真似してごめんね、傷、大丈夫…?」 そういって先ほど俺の頬を擦ったナイフの代わりに、指で傷口を撫でる。ピリッとした痛みに、目をしかめると、わーっごめんごめんと慌てる陸に何だか、もどかしい気持ちになった。 「ああ、このくらい…、和やボスの事を考えたら、全然大した事じゃない。お陰で目が覚めた、ありがとな、陸。」 「う〜ん、素直な浩くんは、ちょっと気持ち悪いかもね…。」 「てめーっ」 いつもの雰囲気に戻った所で、ボスのゆったりとした声が響いた。 「浩、お前も頑張りすぎるな、独自で調査してるのは気付いているからな。最近ほとんど眠れていなくて自分で薬でも打って無理やり寝ているだろう?」 俺は慌てて、ボスの前へ行き、跪く。 「こんな俺に心配いただきありがとうございます。おっしゃる通りです。これからは組織の方針に従います。あの、成の事は…謝るだけで済まないのは分かっています…ですが、成にも、ボスにも、謝らせて下さい…っ、本当に申し訳っ…!!」 「浩。」 土下座する勢いで頭を下げようとした所で、凛とした声に引き止められる。 「お前が気に病まないでくれ、これはボスとしてお前に命令する。あいつは自分の意思でやった事なんだ、浩が謝る必要はどこにもない。」 「ですがっ…!」 「謹慎も、俺の意思でさせている。再度、色々と教え込む事ができて逆にいい機会だった。だから本当に気にするな。」 そう言って、少しにやけるボスを見て、余計に成の身を案じた。 「何はともあれ、やはり今、最も重要なのは、和くんの身の安全だ。愛は狂気と紙一重。映像で見た限りも何だか妙な雰囲気がした。」 その言葉に、俺も陸も目を合わせて頷く。 「では、出来るだけ早く救出できるよう、作戦を練るぞ。」 「「了解!!」」

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