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堕ちる 1 内田side
「和…起きてる…?」
朝昼兼用のご飯を持って、部屋のドアを開ける。薄暗い部屋の真ん中を陣取る大きなベッドの上にはシーツに包まれた愛おしい姿。ベッドのすぐ近くにある小さな机に、ご飯を乗せたトレイを置いて、ベッドに腰掛けた。
スヤスヤと眠る和の頭を撫でながら、自分の手元にいる事に安心した。和をここへ連れてきてから1ヶ月半、和が俺の事を好きだと言って受け入れた日から2週間が経った。随分良い具合に仕上がってきている。それでも、食事の準備や薬の買い出しなどで和の側を離れる時は不安になるのだ。
「逃げられるわけ、ないのにな。」
スルリと手を滑らせ、首輪が嵌められた首元を撫でる。くすぐったいのか、和は寝返りを打つ。首と同様に手足を拘束する鎖がジャラリと鳴った。
これだけ縛り付けていてもまだ不安で、
「使用人でも雇うか…。」
そんな考えが頭をよぎった。
「ん……。」
眠りが浅くなったのか、和がもぞもぞと動き始めたのを見計らって、優しく揺すってやる。
「和起きて…ご飯、食べようか?ほら、寝惚けてないで…。」
返事をする訳でもなく、んーっと唸る和の体を起してやり、ベッドに座らせる。そして、和の分の食事を手に取った。
「今日はスープにしたから、具材は細かくしてるし、食べるよね?」
あーん、と口に運ぶが、和は一向に口を開かない。
「和。」
「やっ…。」
キツめに言うが、首を振って拒否する。
「いい加減にしろ、躾られたいのか?」
和は、”躾”という言葉にピクリと反応すると、大人しく口を開ける。
ここへ連れてきた当初、躾の時以外は、朝昼晩きっちりと食べさせていた。しかし、1日に必ず1回はセックスするというルールが、2回以上になったここ2週間程は、体が辛いのか、俺としている時以外はほとんど眠るようになった。昼まで寝かしてやり、起こして食事を摂らせる。そして1度ヤッてから、俺が夕食まで用事をしている間に睡眠をとらせるか、玩具を仕込んでやるかして、夕食後は一緒に風呂に入り、夜遅くまでヤる、というループを植え付けさせたのだ。
だから和は今、1日に2食しか摂っていない。朝を抜く人なんてたくさんいるし、和は少食だから、気にする事はないのかもしれないが。最近は食欲がないのか、その2度の食事でさえ、あまり食べたがらなかった。
それが妙に気になった。
医者を呼ぶにしても、和から薬物反応が出るのは目に見えて分かっている。
そうなると、警察沙汰になってしまう。
それだけは、避けなければならない。
スープをスプーンですくっては、和の口に運んでいき、飲み込んだのを確認して、また運ぶ。という作業を何度か繰り返す内に、和はうとうとし始めた。その可愛らしさに、思わず口が綻ぶ。
「眠たい?全部食べ終わったら寝ていいよ。」
「ん…。」
そして、気になる事がもう1つ。
口数が減った。
減った、というよりも拙(つたな)くなったと言う方が正しいだろうか。
元々敬語を使っていたのに、それも無くなり、言葉を覚え始めた幼児の様に、単語を発するだけになっていて。唯一、セックス中に俺が教え込んだおねだりの仕方なんかは、文で話せているが、それもたどたどしい。これも、精神的に支配できたという事だと思うと嬉しいが、不安なところでもある。やはり、念の為、使用人として闇医者でも雇おう…。
最後のひと口を運び終えたところで、和はスプーンを持つ俺の腕を軽く掴んでくる。
「おくすり…ほし、い。」
ぼんやりとした目で見つめられ、何だか危うさを纏ったその雰囲気に掻き抱いてしまいそうな衝動を抑えて、いつも飲ませている錠剤を口移しで飲ませる。
特殊な媚薬を多量に摂取させている為、その鎮静剤として、一緒に売られていたこの薬を和はよく欲しがるのだ。落ち着くのだろうか、フッと体から力が抜け、再び眠り始めたその顔に軽くキスを落としてやった。
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