61 / 100

依存 3 内田side

頼斗は、眠っている和の頬をひと撫でする。それから首輪に手錠、足枷、後孔から流れ落ちる白濁液を見てニヤリと笑った。 「中々いい仕上がりじゃねーか。監禁して、媚薬使ってヤりまくって堕とした、そんなとこか?さっきタバコ吸ってる時、あんたらの情事の声が聞こえてきたが、相当洗脳したみてーだな?」 和は今、俺を愛してると言ってくれるようになった。しかしそれは頼斗の言う通り無理やりそう仕向けたのだ。好きだ愛してる、と言われる度に温かい気持ちになるのだが、無理やり言わせていることに何となく目を瞑っていた。いざ他人から事実を指摘されると何だか肯定する気分になれず、俺は頼斗の言葉には答えなかった。 「最近和の食欲がないんだ。元々少食ではあるんだが、それにしても食べなさすぎるし、よく吐くから心配でね、それを診て欲しい。」 「へぇ、食事は与えてるんだな。」 「当たり前だ!和は俺の命よりも大切な子なんだ、死なすわけないだろう!」 「はっ、随分細っせえから抜かれてんのかと思ったよ。他に気になるところは?」 そう聞きながら頼斗は、和の脈拍を測ったり医者の様な事をする。 こいつは薬売りだったよな? 「他は、話し方がおかしくなった…。退行したと言うか、拙くなった感じで…口数もかなり少ない。」 「へぇ…、ただの媚薬の多量摂取反応じゃねえな。使ってる薬見せろ。」 頼斗にそう言われ、チェストから和に使っている薬を取り出す。そして言われた通り、どのように使っているのかを説明した。 「このピンクの瓶が媚薬で…、ヤっても媚薬が抜けきらない時に抑制剤としてこの錠剤を使ってるんだが…。」 錠剤を見た瞬間、ピクリと眉を動かす頼斗に気づき、俺は語尾を窄ませてそう言う。すると頼斗は途端に笑い出した。呆然とする俺にケンが聞く。 「これを抑制剤として飲ませたんスか!?」 「あ、ああ…。和がよく欲しがるから…。これを飲ませると落ち着くようだし…。」 やばいっスね、そう言うケンとは正反対に面白そうに笑う頼斗。何がおかしいのか。弟もそうだが、この兄弟の笑いには嫌な予感がする。あーあよく笑った、と言いながら笑い涙を指で拭って説明し始めた。 「まずこの媚薬。これはラッシュって言って、他の媚薬よりも強力で依存性も高い。これだけでも充分健康に害を及ぼすが…問題はこの錠剤だ。これはMDAつって抑制剤でも何でもねえ、覚せい剤とか大麻とおんなじようなモンだ。依存したらもう最後、抜けられねえよ。まあ、欲しがるってことはもう依存してるだろうな。」 「そんな……!どうすれば辞めさせられるんだ…?」 「簡単な事だ、アンタが飲ませなきゃいいだけだ。今みたいに鎖で繋いでいたら、自分で飲む事もないだろ。ただ、1度依存してしまったら、飲まない間は苦しむだろうな。飲みたくてアンタを殺しにかかったりしてな?」 「治す薬は無いのか!?」 ニヤリと笑うその顔にゾッとして、俺は取り繕うように頼斗の服にしがみついた。すると頼斗は、わざとらしく考える素振りを見せて言う、 「残念ながらねえな。けど、アンタに良いこと教えてやるよ。MDAは、惚れ薬とも呼ばれていてな。相手に親近感が湧いたりするらしいぞ?戦時中なんて米軍が自白剤として使ってたらしいしな。まあ、副作用もあるけどな。」 「それは、どんな…」 「重いものだと幻覚、幻聴、錯乱状態に陥ったり、他には…、」 「ま、待ってくれ、和のそんな錯乱状態とかっ、そんなところ見た事がない…!」 だから、まだ薬の依存状態に陥ってないのでは?そんな希望はすぐに打ち砕かれる。 「そうなる前に、今みたいに気絶したりしてるからだろうな。見てないだけで、アンタのいない間に症状出てたみたいだぜ?」 そう言うと、頼斗は和の方を見た。そこでは、ケンが和の髪を撫でていて、そして俺に手招きをした。 「内田サン、よく見てください。ここっス。」 ケンにそう言われ覗くと、頭皮に掻きむしった後があった。赤く小さなミミズ腫れのようになっていて…。こんなにもなっている事に驚いた。 「幻聴の恐怖か、それともクスリが切れて辛かったんスかね…。」 同情するようなケンの言葉に、ここまでしたのは俺自身なのに、和が可哀想で無念な気持ちになった。 「まあ、俺らが言えることはこんだけだ。辞めさせたいなら与えないまでだ。まぁ洗脳するにはもってこいの状態だと思うがな?」 振り向くこともなく、手をひらひらと振って男たちは帰っていった。

ともだちにシェアしよう!