62 / 100
レデル ケンside
内田の家を後にし、アジトに戻る途中の路地裏で頼斗さんは再び煙草に火をつけた。蒸(ふか)した煙が暗闇に消えていくのを俺はぼーっと見ていた。
「ケン、佐伯和に随分惻隠していたみたいだが、惚れたか?」
頼斗さんの口から出た思いもよらぬ言葉に、ばっと立ち上がる。
「いやいや!それはないっス!……ただ、あの子を見てると成や実を思い出して…。」
「会いたくなったか。あいつらの事、弟のように可愛がっていたもんな。」
「あ….いえ、そう言うつもりじゃ…。」
皮肉めいた笑いを漏らす頼斗さんに、しまったと思う。
「ケン、忘れるなよ。あいつらは裏切り者だ。俺たちの本来の任務はキアロを潰す事。情けは捨てろ、命取りになる。」
短くなった煙草の灰がぽとりと落ちたのを見て、頼斗さんはそれを軽く踏み潰した。
「にしても、どいつもこいつも、あのバカ弟んトコのボスに持ってかれちまったなァ。」
気にくわねぇ。
そう言って2本目を咥えて歩き出す。
「ケン。」
「は、はい!」
「佐伯和とキアロの関係、詳しく調べるぞ。案外かなり使えるかもしれねぇ。」
そうして俺たちは路地裏の闇へと消えて行った。
ともだちにシェアしよう!