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洗脳 2

ここ最近は自分が生きているのか死んでいるのか分からない、そんな感覚だった。なぜここにいるのか、身体の至る所にある傷痕は何なのか、どうしても思い出せず、考える事を辞めた。 何も分からない、空っぽになった僕に唯一残ったものは内田さんだった。今もこうして内田さんに抱き締められていて、 内田さんの体温は落ち着くな…。 何故かは分からない。けれど、突然寂しくなったり、身体が震えたり、そうでない時も今のように優しく抱き締めてくれた。この温もりに満たされて、なんだか幸せだった。 でも、何か大切なものを忘れている気がしたんだ。考える事は辞めた筈なのに、答えを探し出したくなってしまった。それがいけなかったのだろうか。 気付けば僕は内田さんの首を締めていて…、 ────そして優しかった内田さんは豹変した。

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