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洗脳 4
ザァァァァァァアア…────
はぁっ、、はぁ、
果てしない暗闇の中で、僕は見えない何かに追われていた。とにかく裸足で闇雲に走っていた。
冷たい…
痛い…
イタイ…
あっ、、、!
疲れと痛みでフラフラになった足は使いものにならず、その場にカクンと崩れ落ちてしまう。
ザァァ…
ぁ…、く、くるな…!
だめ、追いつかれる…!
もうダメだ、そう思った時、
『かず?』
優しい声がして振り返るとさっきまでなかった柔らかい光が見えて。
慣れない目を凝らしてみた先には、
「うちだ、さん…!」
飛びついたその身体は暖かかった。
「ん……。」
ゆっくりと目を開くと、僕はベッドの上で寝ていた。
「ぁ、ゆめ…、」
少し身体が重たくて下に目をやると内田さんの腕が僕を包み込むように覆いかぶさっている。僕が身動いだ事に気付いたのか、内田さんは顔を上げて僕視界にいれ少し目を見開いて強く抱き締めてくる。
「かずっ…、和、よかった……、もう起きないんじゃないかって、、ああ、ほんとうに良かった…。」
必死にそう言う内田さんを見て、考える。何か、あったのかな、僕ずっと寝てた?今は抱き締められていて見えないが、さっき見開かれた目は赤くて、目の下には隈もできていた。
「和、身体は大丈夫?しんどくない?お腹は空いてない?あぁ、取り敢えず、水飲まないとね…。」
矢継ぎ早に色んな質問をされて、どれから答えていいのかわからなくなる。
身体…そういえば身体のあちこちが痛い。良く見れば、至る所に包帯が巻かれていて、そして、思い出した。
ぼく、内田さんの首を…。
「お待たせ。」
いつの間にか、どこかに行ってたらしい内田さんが部屋に戻ってきて、トレイには飲み物やらお粥やらが乗っていた。
「ごめんなさい…。」
思ったよりも声が掠れて出なくて、それでも内田さんにはちゃんと届いたようで。そして、僕の目線が内田さんの首に向いてることにも気付いて。
「いいんだよ。俺の方こそ、自分を止められなかった。こんなにも沢山傷つけてしまった。ごめんね…。和が、空を見たいって言った時、俺から離れて菅井浩の所に戻ってしまうんじゃないかって、不安だったんだ。それでこんなことを…でも、それだけ本当に和の事を愛しているんだ。かず、お願いだから、俺の側にいて…。」
内田さんが泣いている。内田さんが悪いわけじゃないのに…。そんな言葉が頭に浮かんだが、僕の口から出てきたのは違う言葉で。
「すがい、こう…?」
僕の言葉に、内田さんがぱっと顔を上げる。
「あ、ああ、そうだったね…。」
まだ頭にはてなマークを浮かべていた僕に内田さんは説明した。
「菅井浩はね、俺たちの仲を引き裂こうとしてる。今もずっと和の事を狙ってるみたい。だから、すごく不安で、どうしようもなくなって、殴ったりしてしまうんだ。こんなの言い訳にならないかもだけど。でも、もうしない。約束する。」
内田さんは優しい。いつも僕の事を考えてくれていて。なのに時々すごく怖くなる。それは菅井浩って人が関わっていたんだ…。
僕がよく見る悪い夢、追いかけてくる何か…。
あれは、菅井浩だったのかもしれない。
僕たちの平和を切り裂く邪魔者…。
「ゆるせない…。」
「えっ?」
驚いている内田さんを構わず抱き締める。
「僕は、内田さんの、モノだよ…。ずっと側にいる。僕たちを邪魔するなんて、ゆるせない。」
「ありがとう、和。…そうだね、あいつがいなければ、俺たちは幸せに暮らしていけるんだよ。」
その言葉にギュッと目を瞑る。そしてふつふつと湧き出てくる感情を呟く。
「うちださん、僕…お、俺、菅井浩、じゃま、ころす、殺す────。」
その時、内田さんが不敵な笑みを浮かべている事に僕は気が付かなかった。
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