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救出 浩side
「予定どおり今から作戦を決行する。必ず和くんを取り戻すぞ。」
───はい!
凛とした皆の声が会議室に響き渡る。遂に、内田の元へ乗り込むのだ。
居場所を特定した後はひたすらに作戦会議と練習が行われた。陸が不動産屋に潜入し入手した、内田の隠れ家である物件の間取りによると、地下室がある。そこに和は閉じ込められているのではないかと推測していた。アジトから移動中バンの中で、俺、陸、開生、実、涼平の5人で、間取りを見ながら動きの最終確認を行った。そして遂に目的地に着く。
山の麓にそれはあった。辺りは街灯1つなく真っ暗で不気味な雰囲気を醸し出していた。合図と共にキアロスクーロの工務官の作業着を身につけた開生が、特殊な工具で鍵を開ける。
扉はすんなりと開き、実と涼平が先に潜入する。暫く外で待機していると無線機が鳴った。
『1階2階には誰もいません。通常通り作戦Aを決行して下さい。』
実の声に、俺と陸、開生は顔を見合わせて頷く。拳銃を構えた陸を先頭に地下室へと降りていった。冷たい空気が漂う廊下の先には、重苦しい鉄の扉があり、厳重にいくつもの鍵がかけられていた。
まるで牢獄だ。
「開生、いけるか?」
「試してみます。」
俺も護身用の拳銃を構え、警戒する。
空気は冷たいはずなのに、汗が額を流れていった。そして最後の鍵を残したところで開生が首を振る。認証型の鍵だ。
「壊すしか無理だな。作戦をCに変更する。」
『了解、応援向かいます。』
直ぐに駆けつけた実と涼平。5人が揃い、そして扉を見据える。
「一気に行くよ。」
陸の言葉を合図に、一斉に扉に向かって銃を放つ。そして傷を負った扉に一気に涼平が体当たりをした。
開かれた扉の先は酷い有り様だった。
部屋は換気がされないのか、雄の臭いが充満している。部屋の真ん中を大きく陣取るベッドの上には、裸でまぐわう2人の姿。内田に激しく犯されている和には、まるで奴隷のような拘束具が付けられていて──。
怒りを飛び越え、殺意が湧き出る。
逃げようとした内田を追いかけようとするが、直ぐに陸に止められた。
「内田は任せて。浩は和くんの所に。」
「ああ…、っ和…!!」
和の元に駆け寄り、飛びつくように抱きしめた。その瞬間。
「アハハハハハハハハハッ!!」
入り口付近で陸たちに捕まっていた内田が突然笑い出す。そして続けて、「そいつが菅井浩だ!」と笑いながら叫んだ。
「なに…、」
内田の言葉に引っかかったのも束の間、腹がじんわりと熱をもってきて。
「か……ず…?」
状況を理解しようとして順に目でおっていく。
内田の高笑い。和が握っている小刀。
そして、俺の白衣に広がっていく赤───。
視界がクラクラし、汗がぶわっと噴き出してくる。
「「浩!!」」
「「浩さん!!」」
すぐそこにいるはずの陸たちの声が遠くに聞こえた。意識が、そろそろやばい。
小刀を持っている手鎖を付けられた和の手を、左手で押さえつつ、右手で白衣から睡眠薬の入った注射器を出す。それを俺から奪い取ろうとして、和が小刀を手から離したのを見計らい、抱き締めるように動く体を制し、和の肩に注射針を刺した。
「かず……ごめん、…。」
更に暴れる体を腕の中に閉じ込め、最後の力を振り絞り、強く抱き締める。
「迎えにきたよ。」
そうして、俺たちは一緒にシーツの海に沈んでいった。
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