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おかえり? 5
「寒い…。」
目を覚ました時辺りはまだ暗くて、微かに開いた襖の隙間から月明かりが弱々しく照らされていた。
久しぶりに夜に目が覚めたかもしれない。身体を起こすと、緩くなった帯のせいで寝間着が肩からずり落ち、肌が外気に晒されてぶるりと震える。
隣に目をやると少し離れたところでぐっすり眠る菅井がいた。いつもは1組の布団で寝ているのに。今日は朝の事があって気を使ってるのかも知れない。そういえば、今日あれから菅井は俺に一切触れてこなかったな…。
もう一度、布団に包(くる)まろうとして、辞めた。一筋の弱々しい月明かり。1人で眠るより、そちらの方が温かい気がして…。
俺は吸い込まれるように襖を開けた。
昼間見るのとはまた違った雰囲気。
まだ満足に歩けない俺は、這うようにして縁側に辿り着いた。見上げると思ったより明るい。
優しい光を浴びてふと思い出した。
…内田さんはどうしてるのだろうか。
毎日俺を求めてくれた貴方がいなくて。俺に愛を囁いてくれる事も、俺を抱いてくれる事も、もうないのだろうか。
何だか、とても寂しい────。
誰からも必要とされないのは。
ふわり。
不意に後ろから何かに包まれて、一瞬びくりとしたけど、その暖かさに体の力が弛む。
「起きたらいないからびっくりした。寒いだろ。悪い、それしかなくて。眠れないのか…?」
そう言いながら、菅井はまた少し間を空けて俺の隣に腰を下ろしてきて、俺を包んでいたのが、菅井の羽織だと気付く。
そんな、あんたの方が寒いだろ。そう言おうとして顔を上げたら、
「……っ!」
はっと菅井の息を呑む音が聞こえた。
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