91 / 100
僕と影 15
「いい加減にしろ!!自分の命をなんだと思ってる!生まれてきた事が間違い?お前は、お前を生んでくれたお母さんの気持ちを無駄にするつもりか!」
「……っ!」
「お母さんの事、お母さんの家族の事、和のお父さんに聞いたよ。和が叔父さんに言われた事も。」
「だったら、分かるでしょ…。僕が望まれない子だったって…」
「違う。」
「もう!離して…!」
「逃げるな、ちゃんと向き合えよ!」
そう言って、更に体を押さえる力が強くなった。苦しい。心が、苦しい。
「和のお母さんには、和を堕ろして自分が生きる道もあった。でも、お前を生んだんだ。この意味、分かるだろ?」
浩の言おうとしている事は分かる。父さんにも言われた言葉。僕の事が大切だから、母さんは僕を生んだ。僕は望まれて生まれた子だって。父さんも僕を想う気持ちは同じだと。
でも…。そんなに大切にされてきたのに…
「こんなに落ちぶれちゃった…、今更、誰も愛してなんかくれない…。」
親に貰ったこの身体を粗末に扱って、他の人を利用して、そして、大切な人を殺そうとして…。見放されたっておかしくない。
「俺は、どんな和でも愛してるよ。お前じゃなきゃだめなんだよ。分かんねえのかよ!愛されてるって…!」
「でも、僕は…」
「自分を卑下する言葉なら、聞かねえ。お前の本当の、心ん中の気持ちを…俺にぶつけてみろよ…!!」
ぽたり。
雫が額に落ちてきた。
ハッとする。潤む瞳が真っ直ぐに僕を見つめていて。
…きれい。
浩は…、上辺なんかじゃない、心で僕と向き合ってくれている。だから、僕も…
「すき…っ、」
言った瞬間に涙がぶわりと溢れてくる。一度出るとそれは止まらなかった。
「好き…っ、浩の事が…っ…でもっ、…でも、、ぅぅ…。」
「ああ…。」
頬を両手で包まれて、そして、浩は額をコツンと合わせてくる。待ってくれている。続く言葉を…
「あなたの…手を、取るのが怖い…。」
────貴方を傷付けたくない…。
しっかりと伝えた。これが僕の本当の気持ち。
ともだちにシェアしよう!