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僕と影 16
「それでいい。直ぐにじゃなくていい。和のタイミングで俺の手を取ってくれたらいいから…。」
「いい、の…?」
「ああ、必ず、俺がお前の手を引っ張ってやる。言っただろ?どんな所からも救い出してやるって。」
「うん…。」
「ずっと、待ってるから。」
「…ありがとう。」
ちゅ、と唇を重ね合う。ほんの少し、触れるだけ。
これは、約束のキス。
きっとまた、貴方の元へ戻ってくる。だから、もう少しだけ待って。僕の中で色々と清算しなきゃいけない事があるから。ちゃんと区切りをつけて、それから貴方と向き合いたいから。
「…手荒な事して、ごめんな…。」
「ううん…、大丈夫。」
左頬を優しく撫でられて、次に丁寧に解かれた両手。少し赤く痕が付いていて。それを浩はさすってくれる。すると、徐々に痕は消えていって…。
少し寂しい気もした。
「浩の気持ちが伝わってきて、嬉しかった…。僕も、それに応えたい。
……僕はもう、逃げないよ───。」
今まで、してきた行いからも。 僕自身の気持ちからも。
そして、与えられる愛情からも…。
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