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僕と影 19

家を出て、目的地に向かう道中の車内はとても静かだった。緊張して色々と考えていた僕を気遣ってか、逆に浩が話しかけてこなかったのはありがたい。…全ての事にじっくり向き合い直すと決めたからだ。 目的地に着いて、浩がエンジンキーを回した時、僕は道中ずっと考えていた事をぽつりと呟く。 「…母さんは、こんな生き方をしてしまった僕を、許してくれるかな…?」 そう、今日は母さんのお墓に行くんだ。 あれから、…浩に本当の自分の気持ちを伝えてから、少し時間が経ってしまったけれど。どうしても自分の足で歩いて行きたかったから。リハビリも頑張ったんだ。それから、高校にも通い直して。もちろん身売りは辞めて…。そして、内田さんとも話をした。最初、浩は会うことを反対していたけど、元々ノンケだった内田さんの普通の幸せを奪ってしまったのは僕だったから。内田さんには家族がいたんだ…。 だから、どうしても謝りたくて、浩や陸斗さん達が立会いのもと、内田さんに会わせてくれた。お互いに久しぶりに見る顔は、あの時とは違っていて。2人して涙を流し抱き合いながら、謝罪し合った。その時内田さんは地下の牢屋のような所に入れられていたけど、落ち着きを取り戻した今は、陸斗さんの仕事場で引き取って、一生懸命に働いているらしい。 「大丈夫。今日のために和は頑張ってきたんだろ?」 そして、運転席を降りた浩は、助手席に回って僕に手を差し伸べてくれた。 「うん…。」 手を取ると、ぎゅっと握り返してくれる。 大丈夫。その気持ちが手を通して伝わってくる。 僕は、地面をしっかりと自分の足で踏みしめ、ゆっくりと、真っ直ぐに歩き出した。

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