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僕と影 21

沈黙を破ったのは、相手の方だった。そして、僕が言うよりも早く先に謝ったのも、…叔父さんの方だった。 「ごめん。…あの時は、色々とおかしくなっていて、君を傷つけた…。本当にごめん…!!」 「っ、顔を上げてください…!」 勢いよく頭を下げる叔父さんに僕は心から驚いた。以前会った時の叔父さんしか知らないからどうしたらいいか分からない。とにかく頭を上げて欲しくて、咄嗟にそう言った。 けれど、叔父さんは頭を上げる気配はなくそのままの体勢で言葉を続ける。 「暫くして、和くんのお父さんから聞いたんだ。あれ以来、和くんが精神的に不安定になってしまったって…。悪いのは和くんじゃないのに、取り返しのつかない事をしてしまった…。あんな事言うなんて、俺は…っ」 叔父さんは言葉を詰まらせ、それから崩れる様に膝をついて土下座をしようとする。それを僕はすかさず制した。 「やめてください…っ。確かに、父の言う通り、僕は…。でも、それは僕が弱かったから。あなたは、何も悪くありません!」 「和くん…。」 「だから、お願いです。顔を上げてください。」 「俺を…許してくれるのか…?」 「許すも何も、あなたの事を憎んだ事なんて一度もありません…。」 僕は視線を母の墓石に移す。すると叔父さんも同じようにそうして。 「それに、あなたと出会ったおかげで、事実を知る事ができた。母が、僕を愛してくれていた事にも…。気付いたんです。父も、友人も、それに…」 かずーー────! 遠くから、僕を呼ぶ愛おしい声が聞こえる。思わず顔を綻ばせると、叔父さんは僕達を交互に見て、そして優しく微笑んだ。 「和くん。今、幸せ…?」

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