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第2話

童貞という大きな悩みを抱えている俺は、マッチングアプリで恋人探しをスタートする前に、まずは童貞の悩みを聞き入れてくれる赤の他人を見つけることにした。 今思えば、俺のその選択が間違っていたんだと思う。 何故、俺が男と2人でラブホテルにいるのか。 今の状況を整理するためにも、俺は順を追って回想する必要があるだろう。 ことの発端は、一ヶ月前。 親友に勧められたマッチングアプリを使用し、趣味が合う友達、恋人探し、セックスフレンドの募集、とか。マッチングアプリといってもその中で分類分けされている項目の中から、俺は性の悩みについて相談出来そうな人を探した。 そうして、俺が見つけ出した一人の男性がいる。 プロフィールに掲載されていた年齢は38歳、アイコンはまっさらで、彼のネームはリョウ。プロフィールには未婚とあったため、38歳でまだ結婚もしてない男ならワンチャン俺と同じ童貞なのではないかと。 俺は想像だけでそう思い込み、この人なら童貞の悩みを共有できると踏んで、俺から連絡をしてみたのが最初だった。 親友にしか言えない悩みを赤の他人に話すのはそれなりに緊張して、でもリョウさんは親身になって俺の相談に乗ってくれて。俺はリョウさんと話していくうちに、リョウさんが非童貞なことを知り、未婚ではなくバツイチなことを知った。 俺の中の想像とは全く違うリョウさんだったけれど、それでもリョウさんの人柄の良さに甘えて。俺はリョウさんが俺と同じ童貞ではなくても、良き相談相手として毎日連絡を取り合うようになっていたのだ。 活字だけのやり取りでも、リョウさんの文面上の言葉遣いは硬くもなく砕けてもいなくて。言葉の節々から相手を思いやれるような柔らかな印象を受けるリョウさんからの返事を、俺はいつしか楽しみに待つようになっていた。 顔も本名も分からない相手になら、声を聴くこともなく文字だけのやり取りなら。俺が童貞ということを隠さずに話が出来たし、性のこと以外にも仕事の相談や、趣味の話をしているうちにお互いがお互いに興味を抱き、会ってみないかという話になったのが一週間前。 待ち合わせの時間と場所を決めたのが五日前で、実際に会ったのが三時間前。駅前の花時計で待ち合わせて、その後に二人で食事に行って…そのまま解散するのかと思いきや、もう一軒付き合って欲しいと言われ彼の車に乗り込み、連れてこられた場所が。 ───ココ、ラブホテル。

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