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1-5 崖っぷちとボンクラ

住宅街のど真ん中で、 ゆとり世代の申し子南鈕ことミナミは頭を抱えていた。 「うおーどこかマジでわかんねえ」 夜も更けに更けて急がねば終電を逃しそうな時間である。 ミナミは例によって仕事で至らぬミスを犯し、至らぬ残業を強いられ 結局終わらず休日家に持ち帰ってまで仕事をせねばならなかった。 休日の全てを使い果たしやっと終わった頃にはすっかり日が暮れていた。 ただ働きをしたようなものであると ミナミは久々に遺憾に思ったが、 そもそもミスさえしなければこんな事にはならなかったので自己責任である。 怖々と課長である真壁ヨコに、終了した旨を電話で伝えると 3歳しか変わらない課長はブチギレて 「いつまで掛かってんだお前は今すぐもってこい!」 と電話口で怒鳴られ、仕方なく課長宅までデリバリーせねばならなくなり…… そして現在に至る。 送られてきた地図通りに駅から歩いてきたものの、一向にそれらしき家は見えず 住宅街の中、街灯の下をため息をつきながら歩く。 「ああーここって何丁目なんだ…? 駅がどっちかもわかんねえー」 ミナミは地図アプリを駆使出来ずに頭を抱えた。

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