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1-9 課長さんは気苦労が絶えない!

朝っぱらから最悪の会議に出席をし、 ようやく解放された。 朝一にいい大人が集まってする話なのだろうかという疑問を抱く正常な脳をバグらせ無ければ この会社で生きていけないという不条理。 ヨコはイライラを煙草の煙と共に捨て去り、 自分の部署へと戻った。 部署では相変わらず雨咲はバリバリと働いていて、 裾川は余裕そうにマイペースにやっているようだ。 いつもぼーっとしているミナミは今日はより一層ぼーっとしていた。 放っておけばヨダレでも垂れそうなアホ面である。 彼はマウスに手を置いているものの全く動いてはいなかった。 自分の席に戻るべく彼の後ろを通過するついでに、 持っていたコピー用紙でミナミの頭を叩いた。 「おい平社員。手を動かせ」 画面を覗き込むとエクセルが開かれていたが 何故かモナリザの絵がありヨコは瞬きをした。 「は?…ってお前能力どこに注いでんだ!」 いったい何時間注ぎ込んだのか。 ヨコは深いため息を零す。 「課長はいいですよね…オレはこのモナちゃんだけっすよ..」 「モナちゃんて…友達かよ」 「...真壁課長っ!本命はどっちなんですか!?」 ミナミは立ち上がりいきなりヨコの両肩を掴んできた。 いつになく真剣な眼をされヨコは思わず息を飲む。 「おお…真壁くんがまた爆モテしてるらしいぞ…」 裾川がヒソヒソと雨咲に声をかけていて。 雨咲は怖いくらいガン無視している。 「…違…って、ちょっと待てお前"どっち"ってなんだよ…」 ヨコは背中を伝う冷や汗を感じながらミナミを見た。 ナナメは85%の確率で女に間違えられるのでそれは仕方ないとして、何故二択なのか。 「抱えていた子とチャイナ服を着た子がいたでしょ?狡いですよ…2人も.…」 「はァァァァ!?チャイナなわけねえだろ!」 どこをどう間違えたらあの物理力溢れるのが本命に見えるのか。 ヨコは半狂乱で叫んだ。 「チャイナだって…すごいね…モテ男は…」 「……。」 「あの子は彼女じゃないんですか!?」 「違う!あの方は俺の恋人の職場の方で! ちょっとファッションが特殊なだけ!」 ヨコが早口に説明すると ミナミは、そうなんだぁ…!と目を輝かせ始める。 「....もういいから仕事してくれ」 頭痛がするのを感じながらヨコは眉間に片手を当て呟いた。 「ハイ!仕事しまぁっす!」 ミナミは返事だけは良いものを返しまたモナちゃんが映った画面に向かった。 それは速攻消しとけよ…、とツッコミながら自分の席に戻る。 「……。」 「……。」 裾川と雨咲の方を見ることができなかった。 ミナミめ…、ヨコは平社員を心底呪ったのであった。

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