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1-17 ファンファンデートデート!
女の子となら眠気を誘うラブロマンスを観なければならなかったが相手は同性なので
ミナミは見たかったSF映画を観ることが出来たし
その感想を嬉々として2人で話し、
他にも鬼課長のことやらアイドルのことやら光熱費のことやら
色々と話したが楽しくてあっという間に日は暮れていた。
袖野はメールよりずっと話し上手だったし、
自分よりはるかに大人だと感じた。
人としても男としても尊敬出来るし、
それでも根底にある"可愛いと思った"という事実が桃色な感情を焚きつけ盛り上がり
ミナミはぞっこんになっていた。
辺りはすっかり暗くなり、待ち合わせをしていた駅まで戻ってきた。
ミナミは彼に向き直ると深々と頭を下げた。
「今日は本当にありがとうございました…、めっちゃ楽しかったです」
「こちらこそ。本当は泣いて帰られたらどーしよーって思ってたんよ。
ミナミくんが楽しい子でよかった」
袖野は爽やかな笑顔を浮かべた。
きゅんきゅんと心臓が締め付けられる。
確かに最初は一目惚れだったのかもしれないが、今は袖野という人そのものに惹かれていた。
「あの…袖野さん」
ミナミは口を開いた。
ずっとずっと、今日言おうと思っていたのだ。
それは相手が同性であっても、チャイナ服じゃなくても、関係ない。
「オレ……袖野さんのことが、好き、です」
溢れる想いが喉から滑り落ちていく。
顔が赤くなるのを感じながらも、彼を見上げた。
袖野は細い目を見開いていた。
「……え?…っと…?」
瞬きを繰り返し、返答に困ったように口は半開きのままだった。
ミナミはじっと相手を見つめる。
相手が同性だとか年上だとかましてや世間体などミナミには全く関係なかった。
袖野さんが好き。ただそれだけが真実なのだ。
「…え~っと、そっかぁ…
んんーまあボクはな"そういうの"は気にしないんやけどな、
自分がそうかというと違うし
というか今は誰かと付き合う気はないというか.…」
困ったように唸りながら袖野は呟き続ける。
しかしミナミの脳は暫く彼の言葉の意味を考えた後、何故か脈はあるらしいという答えを導き出したのだった。
「すみません、急に…まだオレの事とか全然知らないですもんね
今すぐに付き合ってほしいとかは言わないですけど…
袖野さんの一番になれるように、頑張ってもいいですか…?」
ミナミはかなり研究した"謙虚な告白"を実践してみた。
袖野は困ったように微笑み首を傾けている。
「ん…まあ、多分気持ちには答えてやれんと思うけど…」
かなり言葉を濁らせる袖野だったが、ミナミには
頑張って!と言っているように聞こえてしまい
ミナミは身体中から力が湧くのを感じ両手を握りしめた。
「ハイ!頑張ります!」
「うぇえ…大丈夫かな…伝わってへんなこれ」
オレは今、恋をしている!!!
ミナミの脳に猛烈な春が訪れたのだった…。
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