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1-26 齟齬と真意は戀愛なりや?

不思議に思って顔を上げると、 顔を真っ赤にして口を鯉のようにパクパクしている彼の姿があった。 「ええ……まじで…?」 「ちがっ、…先輩のバカ!」 マジな反応をされ思わず普通に返すと何故か怒られてしまった。 「もういいですっ終わったら置いといてください!」 上江はくるりと背を向けて逃げるように歩いて行ってしまう。 「いやいやごめんってカミエちゃん…そんな怒ること…?」 怒っている背中に声をかけるが上江は振り返りもせずに行ってしまった。 意外である。 何故この会社にいるのかと疑問に思うほど 恋愛に殊更興味なさそうな彼もどうやら恋をしているらしい。 「…ふうんカミエちゃんがねえ…今度からかってやろ」 常に忙しくて寝不足で、恋愛どころか遊んでる暇もないくらいで 自分たちだけでなく社会人なんかみんなそうに違いない。 それなのにみんなよく恋だのなんだの出来るものだと感心してしまう。 でもそりゃあ確かに出来ることなら好きな人と 1時間でも素敵な時間を過ごせればモチベーションだって上がるだろうし 灰色の生活にいくらか色がつくかもしれない。 「…でもまあ、ボクの場合"そういう問題"じゃないんよなぁ…」 時間がないというのも本当だが、 自分はあんまり、人を好きにならない方がいい人間なのだ。 時計に目をやると会社を出ねばならない時間が迫っていた。 この後の予定を思うと妙に心が重たくなる。 右手をぎゅっと握り締めて、苦笑する。 ミナミくんは、笑顔が似合う。よなぁ…。 彼も泣いたりするのだろうか。 そんな事を考えてしまうあたりが、 やっぱり、そういう問題じゃないのだろう。

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