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1-29 齟齬と真意は戀愛なりや?
袖野は出されたグラスに口をつけた。
アルコールが喉を伝って疲れた体に染み渡っていく。
「…はぁ」
息を吐き出していると、頬杖をついて見ていた雪雛が含みのある笑い方をした。
「どぉしたの?」
「…何がです?」
「元気ないみたい。性的な意味で」
「変な言い方せんでくださいー」
袖野は細い目を更に細めて彼女を睨んだ。
雪雛はくすくすと楽しそうに笑う。
「欲求不満そうな顔してるう。」
「疲れてるんですよ」
確かに疲れているのもあるが、
彼女に指摘されて袖野は自覚せざるを得なくなりため息がこぼれる。
「ねーえ袖野くん?今夜会ったのも何かの縁だし、
私のこの豊満なボディ好きに縛ってくれて構わないのよぉ」
雪雛は自然な仕草で腕を取って服からはみ出ている胸で腕を挟んでくる。
彼女は具現化した官能小説のような存在であるため、こういう事はしょっちゅうである。
袖野は取られた腕を引っ張って胸から抜こうとした。
「結構ですう。今日散々縛ってきたので…」
思い返すとどっと疲れが溢れてきて、考えるのをやめるのであった。
「あぁ。それで元気なかったの」
雪雛は合点がいったように大きな目を開くと、
ようやく腕を解放してくれた。
「ボク編集の仕事なはずなんですけどね?」
「あはは、貴重なのよ~袖野くんみたいな人材は」
作家担当以外の事務的な仕事も増えつつあるが最近"縛る"仕事も増えつつある。
本日も部署の垣根を越えて、
グラビア誌からの依頼でグラビアアイドルを鴨居に吊るしてきた所だった。
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