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1-33 齟齬と真意は戀愛なりや?

目を見開いたまま静止していたミナミだったが、やがて慌てて追いかけてきて ホームで電車を待つ間も、 ミナミは聞いてもいないのに一緒にいたギャル達と女子会をしていた話などをしてきた。 ハーレムやなとちゃちゃを入れると 本当に意味のわかっていない顔をされ、ミナミはおそらく彼女達から男としては見られていないのだろうという 悲しい現実を垣間見たりした。 しかし何故かホッとしている自分がいるのもまた事実で。 「そーいや、たんちゃんって何?あだ名?」 「オレ名前が、ボタンだから。たんちゃんって呼ばれてて」 「ああ…なるほど。珍しい名前やんな」 「うーんまあ。オレは別にどーとも思ってないんすけどね」 「さすが」 「袖野さんは?下の名前なんていうんですか?」 「…ほくと。ってラインみればわかるやん」 「ほくとって読むんだ!きたしょうって呼んでました」 「んなアホな」 思わず噴き出してしまう。 こうして喋っている分は彼はただの楽しい子なのに。 おかしいのは自分の方なのだ。 「じゃーボクもたんちゃんって呼ぼっかな」 「……え」 そう言うとミナミは不可思議な声を出す。 ちらりと隣を見ると、ミナミはぼけっと口を開いていた。 「なに?どしたん…?」 何か勘に触ったのだろうかと思っていると ミナミは眉根を寄せて口を尖らせた。 「めっちゃドキドキするからだめです」 「ええ……?」 その変顔は、もしかして照れている顔なのだろうか。 ここで真っ赤にでもなられたら、気まずくなってしまいそうなのだが 彼の照れ方がおかしくて袖野はまた噴き出してしまう。 「なんやそれ…あっはは!本当おもろいなぁミナミくんは」 「そんな…オレは真剣にドキドキしてるのに」 「あははは、ごめんごめん」 真剣にドキドキの意味もわからないし、そんな彼の超宇宙的思考でも 名前で呼ばれたらドキドキするというのもおかしい気がして。 「もー袖野さん笑いすぎ」 「ごめんごめん」 少し怒っているように肩をすくめる彼に袖野は笑いを堪える努力をする。 その間にミナミはじっとこちらを見上げてきて、やがて俯いてしまった。 「…袖野さんは残酷っすよ。 オレは袖野さんがすごく好きなのに……そんな風に……」 珍しく気弱な声でミナミは呟いた。

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