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1-37 君想えばこそ。
好きな人に、
君にはいつも笑ってほしいだなんて、
そんなカッコイイ事は言えない。
対して徳も積んでない人間だから、
無意識に自分を優先する。欲望に流される。
そうして超絶に後悔して、改善することより避けることを考える。
自分が誰からも受け入れられるように変わることより、
そもそも受け入れられようとする事自体を諦める。
そんな風に自分を変えられず大人になっていくのが、賢くて良いことだとは思わないけど。
疲れた身体を起こして、電車に詰められて、
あくせく働いて、また電車に詰められて、
誰もいない部屋に帰るだけの日々の繰り返し。
誇れるわけではないけれど、
自分なりに良い感じの着地点には近付いている気はしているのだから
それでいいんじゃないか、と思ってはいるんだけど。
恋をしている人が偉いわけでも、ないし
している人が愚かなわけでもない。
そこは否定しない。
好きになってしまうなら仕方ないし、好きになられたらそれはありがたいことだけど。
だが自分はそこから逃げてしまわないといけないから。
「…とりあえず疲れた…」
ぐるぐる考えるのも肉体的疲労でままならなくなり始めて、
袖野はため息をつきながら駅のホームで電車を待った。
こうして油断していると先日のミナミの姿が思い浮かんでしまい笑いそうになってしまう。
卵にまみれてもなお、好きですと言ってくる彼。
彼に嫌われたら、と最近はそればかり考えてしまうのだ。
袖野は泣きそうになって周りの景色を見て紛らわした。
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