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1-42 突撃!隣の緊縛師

「う…っん…、そ…でのさ…ん」 駅から徒歩10分という好条件のマンションなはずなのだが、 早く歩こうとする度にミナミが悩ましげな声を出すので 袖野は社長が大事にしている壺を輸送するかの如く慎重に歩かなければならなかった。 袖野はミナミを肩に担いだままため息を零した。 「ミナミくんねえ。大変申し上げにくいんやけど多分盛られとるで」 「…?昇天ペガサス…?」 「そっちの盛るじゃなくって…」 こんなになっても一応ミナミらしい所は残っているようでホッとする。 しかし、全く不届きな輩がいたものである。 日々エロ小説を読んでいる袖野はピンときてしまったのだが、 どうやらそれは当たりのようだ。 「薬や薬。全く…官能小説じゃないんだから…」 「は…え…?くすり…?」 ミナミはようやく分かったのか呆然とした声を出した。 マンションに辿り着き、エレベーターのボタンを連打してやってきた箱に乗り込む。 誰にも会いませんようにと願った甲斐があって無事に部屋まで辿り着くことができた。 鍵を探すために彼を下ろしたが、 ミナミは壁に寄りかかってなんとか立っている状態だった。 もしかしたらあらかじめ彼をマークしていたのかもしれないが あんな人混みでこんなになるような薬を飲ます奴がいるとは。 しかし駅のホームで生卵を被ったりする彼のことだから これも"平凡な日常"に含まれるのかもしれない。

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