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1-44 突撃!隣の緊縛師
ああ、だめだ、これはだめだ。
「…本当だよ」
自覚しながらも身体は止まらず、
袖野はミナミに口付けていた。
「……っ!」
ぴくりとミナミの身体が震えたが、強く抵抗はされなかった。
するりと頬に触れていた手を頭の後ろへと滑らせ、もう片方は彼の体に回した。
押し付けた唇を薄く開いて彼の唇を食み、
ゆっくりと舌で舐めると彼の身体は、揺れた。
「…、ん…んん…っ」
無抵抗の唇に舌を差し込むと簡単に受け入れられ、口腔へと容易に侵入できる。
逃げようとはしなかったが戸惑っているような彼の舌に触れてやり、
転がすように弄んでやると彼の指はぎゅうっとこちらにしがみついてきて背中が反っていく。
「…ッん…、ン…っはぁ」
唇と唇の隙間から声と、唾液の混ざり合う音が溢れ
確実にそのスイッチを引っ掻かれている感覚がした。
背中で彼を支えていた手を腰に回し、
髪を撫でていた手で頭を掴むようにして上を向かせる。
「…っ!ン、ん"…ーん…う…」
上から容赦なく襲ってやると彼の身体は、逃げようと抵抗するように跳ねていたが
腰と頭にある手でしっかりと抑えていたため
ミナミの身体はもどかしそうに打ち震えていた。
やがて自分も苦しくなってきたので、
音を立てて舌を吸ってやったのを最後に口を離す。
彼の開いたままの口から液体が滴り、喉は天井を見上げた。
「…あッ、…ぁ、…っ」
ビクビクと彼の身体はしばらく痙攣していたが、やがて肢体は力をなくしぐったりと体重を預けられる。
袖野は小さく笑った。
「…キスだけでイくとかなあ…あかんやろ…」
ぼそりと呟くと、ミナミは涙で濡れた瞳を不安げに曇らせ見上げてくる。
「…ご…ごめんなさ…」
「そうだね、ミナミくんが悪いかもね」
彼の身体をうつ伏せにベッドに横たえ、
袖野は苦笑しながら自分のネクタイをするすると解いた。
「嫌われないようにとか、常識的な人間として色々考えてたのに」
不思議そうな顔をするミナミの力の入っていない両腕を取り、手首を重ねてネクタイで縛った。
ぐ、と力を込めて結び目を締め付けると、ん…っ、とミナミは身体を揺らす。
その反応に深いため息がこぼれた。
「そういう可愛い反応するから悪いんだよ?」
限りない感覚。欲望に流される感覚。
久々の兆候に対しての呆れかもしれなかったが、
目の前のひ弱な存在に対しての恍惚にも似たものだったのかもしれない。
「袖野…さん…?」
振り返った彼の滲んだ瞳に不安げに見つめられ、
袖野は自分のシャツのボタンを外し口元に笑みを浮かべた。
「名前で呼ぶとドキドキするんだっけ?」
「…え?」
「鈕」
カァ、と彼の頬が染まり思わず自分の唇を舐める。
どこからともなく、自分でも無意識に取り出していたものを彼の身体に巻き付け、結び、締め上げた。
「…っ、あ…!?…や…ッ」
きりきりと、
縄が肉体に食い込むたびに鳴く声が、
滴る涙が、溢れる液体が。
うるさいほど、
滾らせる。
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