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2-4 ラストオブ恋

「ミナミさん。頼れる人は頼られたいなんて言わないんですよ それに人の事よりまず自分の仕事を完璧に終わらせるべきでは?」 向こう側の席から鋭い声が聞こえる。クールな女子社員雨咲が眼鏡を光らせながらこちらを見ていた。 確かに反論できない。 「うぐ…わかりましたよ! 終わらせればいいんでしょーカン、ペキに!」 ミナミは口を尖らせながら渋々とパソコンの画面に向かった。 「完璧の意味わかってんのか?」 「失礼なー"ひたすらまっすぐ"ってことでしょお」 「…うん?」 「ミナミさんは頼るとか以前の問題ですね」 はぁ、と2人にため息をつかれミナミはまたもや遺憾に思ったが無視することにした。 どうやらオレは頼り甲斐がないらしい。 だからほくとさんも、なんでもないよとかって笑うんだろうか。 頼られたい。男子たるもの頼られたい。 ミナミは画面に向かって2分で飽きてしまったが、完璧にやると言った手前後に引けずちらりと真壁課長を盗み見た。 「この前の案件どうなった?」 「資料出来てますよ。そっちに送りますね」 雨咲と仕事の話をしている彼は何やら並々ならぬオーラを感じる。 キリッとした空気に、堂々たる身のこなし。 あれを身につければオレも頼られる男になれるのかしらとミナミはかたかたとキーボードを打ちながらも オレは変わる…大人の頼れる男になるぞ!と決意するのであった。

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