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2-6 ラストオブ恋

あれが世に名高い魔性の女というやつなのだろうか。 呆然と立ち尽くしていると外野が背中に蹴りを入れてくる。 「ウラヤマシー」 「俺も混ざりたかったぁ」 振り返ると同じ編集部の変態どもであった。 ニヤニヤ笑いながら肘で突かれるという古風な技をくらい、ため息を零す。 「見てたんなら助けてくださいよ… なんでボクにこんな絡んでくるのやら」 彼女と自分の接点はその撮影のみだったし、 確かにあの写真集は評判が良かったのだが あそこまで絡まれる筋合いはないはずだった。 全くの不可解に肩をすくめていると変態その1は腕を組む。 「ゆりえちゃんSキャラで売り出してるけど実はMだったとかー?」 「は?」 「縛られて惚れちゃった的な?」 変態その2もにやにや笑っている。 袖野は眉根を寄せた。 縛られて惚れる????? いや、確かに世の中にはそういう性癖の人間がいることは知っている。 知っているのだが、あんなに綺麗な人が? そんなことってあるのだろうか? 袖野は不可解すぎて頭が爆発しそうになり、 とりあえず腹が立ったので変態共の鳩尾に拳を沈めておいた。

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