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2-11 野生の変態

一方その頃超銀河的ボンクラは地面に這いつくばっていた。 「..........オレが大人じゃないから」 ミナミの心は珍しく荒波だった。 その荒波の中サーフボードに乗ったアザラシが ひっくり返っては宙返りしを繰り返しながら やがてボロボロと涙となって溢れてくる。 アザラシごと荒波が押し流され、先程目撃した光景が浮かんでくる。 すごく綺麗な女の人と何やら大人な会話をしながら消えていった自分の恋人の姿。 ミナミは彼と一緒に帰ろうと迎えに来た手前 自動販売機の裏にハマって抜け出せないでいるところ、 そんな2人の姿を目撃してしまったのであった。 「どうしよう....とてもつらい」 ミナミは地面に這いつくばったままぼたぼたと涙がアスファルトに染み込んでいく様を観察した。 浮気を疑っているわけではない。 ほくとさんは優しいから、きっと何か深いわけがあるんだろうし。 自分の知らない交友関係があるのは当然だと思うし。 だが何故か胸が苦しくて辛いことには変わりなかったのだ。 「ええい泣くな南鈕...っ! そういうところが子供っぽいんだぞォォ」 ミナミは無理矢理自分を奮い立たせてよろよろと立ち上がった。 でも本当は、彼を独り占めしたいと思うのだ。 彼が頼って縋ってくるような大人になりたいのに。 「ぼうや、どうしたの、だいじょうぶ?」 声をかけられミナミは涙を拭いながら振り返った。 真っ黒なローブで身を包んだRPGに出てきそうな老婆が立っている。 「どこかいたいのかい?これをたべればいたくなくなるよ」 そう言いながら何かを差し出されたがミナミは片手を突き出して拒否のポーズをとった。 「ダイジョウブです!オレ、大人ですから!」 オレは大人に、頼れる男にならなければならない。 ミナミはそう言いながら老婆の横を通り過ぎ駅に向かって歩き出した。 恋人と謎の美女の所在が気になるところだが、 ここは大人として大人の対応をする事にしよう。 「おれはおとな...おれはおとな....大入?大人?」 だんだん大人がゲシュタルト崩壊してきたミナミであった...。

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