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2-12 大人あるある
ナイフを持ったウサギのスタンプが全く送られてこなくなってから数日が経った。
あれだけ絵文字大爆発だったのに急に文字だけのメッセージになったミナミのラインには
何か怒らせてしまったのかと探りを入れるものの肩透かしである。
代わりに自分がメンヘラウサギのスタンプを送ってやるのだが
見事に既読スルーという小悪魔的対処でいなされている。
その代わりにもならないのだが、
ゆりえからやたらと目がキラキラしたネコのスタンプが送られるようになってきた。
これが30代のおっさんのトーク画面かというほど
現代女子たちに蹂躙された携帯端末を机に伏せって袖野は編集室の汚い天井を仰いだ。
全く若い子の感性にはついていけないし、
こういう駆け引き的な事は今まで避けてきた分苦手なのである。
「たい焼き食べたい」
現実逃避を始めていると、どさりと目の前に何かの紙の束を置かれ飛び起きた。
いつも通り不機嫌そうに口をへの字に結んだ社長賞編集の上江がこちらを睨んでいた。
「え、何これ?」
「特筆25周年記念です」
「は?」
「特筆25周年記念号に今までのバッグナンバーから厳選して載せよと」
「........。」
上江の機械的な口調に袖野はさあっと血の気が引くのを感じ
めちゃくちゃ体がたい焼きを欲し始める。
「ボク早く帰りたいんやけど....」
「私もですよ...」
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