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2-16 大人あるある
「おれは....おれは、もっと…大人になりたいです....」
ミナミはそう言って、うえええええんと幼稚園児のように号泣し始めたので
袖野はいよいよ困ってしまった。
開き直って自動販売機の上で号泣する人です!という動画でも撮ろうかと思ったくらいだ。
「ミナミくん...」
名前を呼ぶが彼は泣きじゃくっている。
いい加減に下ろさねばと袖野はつま先立ちを極めてすうと息を吸った。
「鈕!」
大声で名前を呼ぶとミナミはびくりと身体を硬直させ怖々とこちらを見つめてくる。
「抱きしめたいから降りてきて」
「...う...」
ミナミはびくびくしながらも少し離れて両手を広げる袖野を見下ろしてくる。
まるで登ったはいいが降りられない猫のようだった。
「早く」
そう言って急かしてやるとミナミは意を決したように目をぎゅっと閉じて自動販売機の上から飛び降りた。
一緒になって地面に倒れてしまいそうになったが
なんとか堪えて彼を受け止め、そのままその身体をぎゅううっと強く抱きしめてやった。
「ほくとさん...ほくとさん....っ」
ミナミは耳元でそう言って呼びながら抱きしめ返してくる。
「...泣かんでよ..」
久方ぶりのその温度と抱き心地に、
いよいよ疲れを思い出して頭がくらくらした。
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