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2-20 ファンタスティックデートデートデート!

ほんの一時ではあるが激務から解放されたということで、 袖野からデートのお誘いを受けミナミは例によって浮かれていた。 心に引っかからないものがないわけではなかったが、 それでも好きな人に会えるというのは例外なく嬉しくて、スキップ交じりに歩いては あ、でもこれは子どもっぽいぞ!と反省してはしずしず歩いてみたりするのであった。 お休みの日に2人でお出かけ、だなんて 付き合い始めてからは初めてなのでミナミは再び気合を入れたデートコーデで駅に向かった。 待ち合わせの駅に既に彼は居て、 柱を背に携帯端末を眺めていた。 「ほくとさん!」 ミナミは嬉しくて思わず笑顔になってしまいながらも彼に駆け寄った。 夏色スローモーションな私服をお召しになられた袖野氏はミナミの恋愛サーキュレーションな眼球には白馬の王子様に見えるのであった。 「本日は急にお呼びして申し訳ございません」 袖野は爽やかな笑顔とともにぺこりと軽く頭を下げて見せた。 ミナミは思わず背筋を伸ばしてしまい、えーと、と唸った。 「こ、こちらこそかくべつな...おひきうけ...おひきわり...」 結局うまく言えずミナミは、うう、と肩を落とした。 昨日ラインで話していた上手な敬語使えるか選手権は圧倒的な差をつけられ早くも幕を閉じたのであった。 袖野はケラケラ笑い始める。 「あはは何語やねん!」 「やっぱりオレ上手な敬語とか無理っす…」 「せやなぁ。そのままでいーよミナミくんは」 袖野に頭を撫でられ、よくはないのだろうけど、そう言ってくれたことが嬉しかった。

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