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2-25 ファンタスティックデートデートデート!

オレンジ色に染まる世界で2人は暫く見つめあった。 忙しさと疲労と社会の不条理に流され続ける自分達は 常に不安だらけで、怖くて堪らず妙な過ちをおかしそうになったりするのだろうけど。 それでもこうして2人でいられるときは、本当に何も要らないとさえ思うのだった。 しかし袖野には確かめなければならない事項があった。 「...で、カストリウムって何...」 質問をした瞬間、突然携帯端末がけたたましく鳴り始めた。 電源を切るのを忘れていたらしい。 反射的に端末を取り出すと、そこには編集長の名前が映し出されていた。 「ちょ…ちょっとごめん」 袖野は彼に謝り、背を向けて電話に出た。 「はい?」 『おー袖野っちーごめんけど今から言うとこに今すぐいってくんねえ?』 「は?」 『いや実はさ、今日星風ゆりえちゃんが写真集特典のDVD撮影してんだけど なんか突然ゴネ始めて今トイレに立てこもってるらしーんだわ』 「はぁ」 『で、袖野さんじゃなきゃ開けない!って言ってるらしくて』 「.....。」 いつもの調子で無茶振りをしてくる編集長に袖野は白眼を剥きながら電話を切ろうかと耳から離した。 『あー切るなよー切ったら減給な』 「なんでボクなんですか!」 『知らんわそんなんーだけど向こうさんからキレ気味に袖野を出せって言われたからマジ行け今すぐ』 「んな勝手な...」 『ありがとう!さすが袖野っち!いやーデキる男は違うね。 じゃあよろしく〜』 そう言い残しぶちりと電話を一方的に切られ、袖野は震えた。 なんと、社会は、会社は理不尽なのであろうか! 行き場のない怒りに震えながらも袖野はミナミを振り返った。 彼は今にも泣きそうな顔をしていて、置いていくことなんて出来るわけがないのに。 しかしミナミは無理矢理に微笑んだ。 「なんか…よくわかんないけど、行ってください」 こういう時、なぜ彼には全てわかられてしまうんだろう。 袖野は思わず彼を抱きしめてしまった。

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