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2-26 ファンタスティックデートデートデート!

「ミナミくん、ボクは本当に不甲斐ないし社畜だし 君に無理させてばっかでダメな大人やと思う」 「そんなこと、ないですよ。ほくとさんは立派な大人です オレは何にもできないけど...」 そう言い切ってポンポンと背中を撫でられる。 彼の触れたところが暖かくなって、 袖野は腕をそっとほどき、ミナミの顔を見下ろした。 「…ミナミくんにしか許してもらえないわがまま言ってもいい?」 「なんですか?」 「ミナミくんのこと縛りたい」 ジッと彼を見つめがら呟くと、ミナミは目を丸くしている。 今まで付き合った人の中で、 まあ縛られてもいいよと言ってくれた子はいたが 結局みんなドン引きして、やっぱ無理..、と離れていってしまうのだ。 しかし自分と緊縛は切っても切れないもので こうして呪いのようにつきまとってくる。 怖い、嫌われたくない。 でも、矛盾した欲望。 ミナミはやがて俯いてしまった。 あれ以来ミナミの事を縛ってもいなければ抱いてもいない。 やはり無理なのだろうか。 袖野は言葉が見つからずただジッと彼を見つめ続けていた。 「.....オレ...、ほくとさんに..縛られたいっす...」 ぼそりと呟かれた言葉。 袖野は暫く打ちひしがれていたが、また彼をぎゅっと抱きしめた。 レイがもさもさして邪魔だったがそんな事どうでもよくなるほど 彼が愛しくてたまらなかった。 「...ありがとう」 泣きそうになるのを堪えて、袖野は身体を離した。 ミナミは顔を真っ赤にしていて、今すぐにでも鴨居に吊るしたかったが 先ずは社会の歯車を努めなければならない。 袖野はポケットから鍵を取り出し彼に渡した。 「待ってて。」 ぎゅっと彼の両手を握り締め袖野は走り出した。 理不尽なこの世界、それでも彼が待つというのなら 自分は不思議と強くなれてしまうのだ。

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