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2-30 なんでもない。

こんなことなんでもない。 彼が誇る恋人であるためなら他愛ない。 袖野は家路を急いだ。 鍵を手渡してしまったもののもし彼がやっぱりやーめたと帰ってしまっていたら、 自分は家に入れないじゃないかとドアの前まで来て気付いた袖野であった。 どうしよう..いなかったら色々どうしよう..。 そう思いながらも怖々ドアノブを回すと、ちゃんと抵抗なく開いて一先ずホッとした。 部屋の中は電気はついているもののシーンとしていて、 袖野は、ふう、と息を吐きながら靴を脱いだ。 床に三角座りをして蹲ってるミナミの姿が見えて、 本当に申し訳ないことをしてしまったと胸が痛くなる。 「...ミナミくん、ごめんな」 そっと彼に触れる。 泣いているのかと思ったが顔を上げたミナミはいつも通りの気の抜けた真顔だった。 しかしすぐに目を逸らされ、袖野は若干ショックを受けてしまうのだった。 「..え、えっと...どうしたん?」 「ほくとさん...」 ミナミは俯く。 なんだか深刻そうな彼にいよいよ終わりかと覚悟しながら 袖野は黙っていた。 「すみません...ほくとさんオレ..見つけてしまいました.. ほくとさんのベッドの下から」 「...え」 予想外のことを言われ一瞬思考が止まったが すぐに、妙な焦りに苛まれてしまう。 ベッドの下?え?なにかあったっけ? やましいものはなかったはずだが、ミナミはベッドの下に手を伸ばし何かを取り出した。

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