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2-32 なんでもない。

袖野はそっと彼を引き寄せて、抱きしめた。 「遅くなってごめんな..」 やっと、やっと彼を抱きしめられる。 自分はずっとこうしたかったに違いない。 ドキドキと、彼の心臓も自分の心臓もうるさく鳴いていて こんな時間がずっと続けばいいのにと思うほどだった。 ミナミの顔は真っ赤になっていて、その可愛らしさに苦笑しながら唇にキスをした。 「....ん...」 ちゅ、ちゅ、と音を立て短いキスを繰り返しやがて深く長いものへと変わっていく。 今自分は社会や会社には何も関係なく ただ、純粋に。 ミナミくんの、奴隷だ。 「っ、ん、..ふ、..ン」 彼の腰を抱いて、舌を絡めて 睫毛が揺れてるのを見つめながら、シャツのボタンを外していく。 ベルトにも手をかけ、器用に片手で外し 唇の隙間から唾液がとろとろと溢れ出しても構わず貪った。 「...ん"...ッ、ぅ...、っ..ん」 溺れそうに苦しげな声を出す彼に、ようやく唇を離した。 お互い荒れた呼吸を繰り返し、袖野は彼をベッドに持ち上げて座らせた。 ミナミは顔を赤くし涙目で酸欠なのかふらふらしている。 縄を取り出しベッドに乗ると彼を見下ろした。 「..あっち向いて」 袖野がそう指示すると、彼はぎゅっと唇を噛んで俯きがちに向こう側を向いた。 震える背中にそっと触れて、シャツを脱がせながらうなじに口付けた。 「怖い?」 彼の体を抱きしめるように縄を巻き付けていくと、ミナミは首を横に振った。 怖いと言われても止めてあげられそうになかったが 我慢していそうな彼に申し訳なく思いながらも 愛しい彼の身体の自由を少しずつ奪うたびにたまらなく高揚している自分がいた。

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