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2-40 放っておけない人
星風ゆりえのDVD付き写真集は、
この写真集が売れない時代の救世主と言われるほど飛ぶように売れたらしい。
彼女の迫真の女王様っぷりは世のドMの心を鷲掴みにし、
今度は映画にも出るらしい。
彼女は“人に命令され嫌なことをしている自分”という風に上手く変換ができたようだ。
しかしあの撮影所での一件で些かやり過ぎたようで、
袖野の元へは仕事依頼が緊縛以外のものも来るようになり
疲れた社会の現状を思い知らされる。
もちろん丁重にお断りしたが。
何故ミナミが大人になりたがっていたのかは未だにわからないが、
彼は彼で何か吹っ切れたらしく今まで通りのハートの絵文字大爆発のメールが送られてくるようになった。
目がチカチカするが、これも愛だと受け止めておこう。
多分これは最後の恋。
最近、恋人が出来た。
それもオレには勿体無いくらい格好よくてめちゃくちゃ優しくてすごく大人で
変われ変われと言われるようなオレにも、そのままでいいと言ってくれる。
「ごめんなぁミナミくん...待たせてしまって...」
走ってきたのかぜえぜえいいながら、
袖野北翔はその長身を折って座り込んでいたミナミに顔を近付ける。
ミナミはへらっと笑っては立ち上がった。
「いいっすよ。チューしてくれたら許します」
「はーなんやそれ」
袖野は呆れたように笑って、ミナミの頭を撫でてくる。
格好良くて優しくて、
そんなひたすらまっすぐな素敵な恋人、だから
オレみたいなので丁度いいんじゃないかって思ってる。
逆にね。
「はい、チューーーーー。」
「ええ!?ここで!?」
だってほくとさんは、放っておけないだろうから。
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